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複雑な気持ち

2018.02.04(22:22) 271

 今年もはや2月,日本列島は今最も寒い時期です.1月中旬からインフルエンザが猛威をふるっており,クリニックでも毎日検査キットが飛ぶように使われています.

 さて先日,あるご高齢の男性が,最近歩行時などの息切れがひどくなったとの訴えで,その方の友人であり当院に通院中の別の患者さんに連れられて受診されました.

 男性によれば,自分は今までたいした病気もしたことがなく普段はいたって健康だとのこと.しかし,薬手帳をみると降圧剤や抗血小板剤など多くの循環器系の薬が毎月きちんと処方されているではありませんか.そのことを問うと,その先生はかかりつけ医なので,風邪などの時はもちろん,毎月通院して薬をくれるのでとりあえず飲んでいる,でもなんの薬かは全然知らないと平気でおっしゃるのです.

 果たして,胸部レントゲン写真では右肺野に大量の胸水が認められ,心不全や癌性胸水が疑われました.かかりつけの先生にも電話をして事情を説明,入院が必要と思われたため直ぐに近隣の病院に紹介しました.

 別の日,あるご高齢の女性が来院されました.長らく近隣の医院に通院していたがそこの院長先生が高齢にて引退,閉院となったので,今後当院で診て欲しいとのこと.

 降圧剤の他にビタミン剤,制酸剤など数種類の薬が投与されているようでした.
この患者さんに,前医での通院間隔を尋ねたところ,なんと毎週通院していたとのこと.また普段の健康状態や薬の内容について尋ねたところ,やはり前述の男性と同じような答えでした.患者さん曰く,毎週通って血圧を測ってもらうだけだが,すっかり他の患者さんたちと仲良くなり,待合室で話をするのが楽しみだったとのことです.

 実はこんな例は,枚挙にいとまがありません.
 少子超高齢化社会となり,しかも核家族化で独居老人が増える中,医療機関が病気を治すために訪れる場所というよりも,いわば社交の場と化しているということでしょう.
「最近〇〇さん,来てまへんなぁ」,「病気とちゃいますかねぇ」なんていう冗談のような話になるのです.

 二番目の患者さんについては,血圧が安定していたら毎週通う必要など全くないし,混んでいる時に長く待っていただくのも気の毒なので,月1回で十分ですよ,と彼女の負担も慮ってお話ししたのですが,彼女にとっては「社交の場」を減らされてしまったのではないかと考えると,本当にそれでよかったのかとさえ思ってしまいます.

 介護だ在宅だとかしましく叫ばれている昨今ですが,彼女にとっては,医療機関に毎週通って他の患者さんたちと話に花を咲かせることが,実は効果的なリハビリになっていたのではないか?医療費の無駄といってしまえはそれまでですが,通院が少なくなって足腰が弱り他人と話す機会も減ってボケてしまい,介護が必要になってしまったら結局同じことではないか?と考えると,複雑な気持ちになります.

 医療機関は病気を治すために利用するところであり,国家財政を脅かすほど高騰している社会保障費を考えると,少しでも無駄な投薬や通院を減らした方がいいのは自明の理ですし,国の方針もその方向です.

 しかし,特にご高齢の方々にとって医療機関が一種の「見守り」の役目を果たしていると考えれば,ある程度「社交の場」であることが許容されてもいいのかもしれません.

 ただ,自分が何の病気でどんな薬を飲んでいるのか,せめてそれくらいのことは知っておいて欲しいと思います.さもなければ一生懸命治療している側としてもやり切れない気持ちですし,きつい言い方をさせて貰えば,国民の血税や保険料で支えられている医療保険制度に対して失礼だと思うのですが,いかがでしょうか.薬は犬のエサではないのですから(笑)


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忘れられぬ年明け

2018.01.10(00:07) 270

 新しい年が明けました.

 正月2日は,マニラの長女夫婦と東京の次女夫婦が我が家に集まってくれ,楽しいひと時を過ごせました.また4人とも公私ともに元気に充実した生活を楽しんでいる様子で安心しました.

 夜には三宮に繰り出して新年会を行なったのですが,なんとここで新年早々,人生初の貴重な経験をしました.

 初詣客で賑わう生田神社の少し南にあるビル5階の居酒屋に予約通り6時半に入店,乾杯のあと,一品目を楽しんでいた時です.いきなり非常ベルが鳴り響きました.店員曰く,ブレーカーが落ちたようなので安心してくださいとのことだったのでそのまま食事を続けていたのですが,またもや非常ベルの音.しかも少し焦げ臭い匂いが立ち込めて来たので,客も少しザワつき始めました.店員もバタバタと慌て出し,さすがにこれはおかしいと思っていたら,店の中に煙がどんどん立ち込めてくるではありませんか.
 この時点で,とうとう店員からすぐに避難してくださいとのこと,我々も他のお客さんたちに混じって避難口に向かいました.店の中には多くの客がいたようですが,幸い避難はスムーズに行われ,階下に降りて全員の無事を確認,安堵しました.上を見上げると我々のいた居酒屋の窓から煙が吹き出ており,ビルの周りには多くの人だかり,そして間もなく消防車がけたたましいサイレンを鳴らして数台集まってきて,辺り一帯は騒然となりました.

 この火事は,やはり我々がいた居酒屋の厨房から出火したことが原因であったとのことを直後にネットで知りましたが,幸い大きな火災には至らず,怪我人もいなかったようです.

 ちなみに「宴会難民」となった我が家でしたが,幸い近くに同じ様な他の店が見つかり,このびっくりするような出来事も酒の肴にしながら楽しい話しに花が咲きました.

 正月早々火事に会うなど運が悪いと言ってしまえばそれまでですが,貴重な経験を誰一人として傷つくことなく出来ましたし,日頃から避難路などはきちんと確認しておいた方がいいということを身を以て感じられたとポジティブに考えたいと思います.

 翌日,店の責任者が謝罪の電話をくれましたが,責任云々はともかくとして,兎にも角にもボヤ程度で済んだのは幸いでした.

 さて,今年はクリニック開院10周年,そして私もなんと還暦を迎えるという大きな節目の年になり,改めて身の引き締まる思いです.

 今年も,私や家族が,そして日本や世界の人々誰しもが少しでも平穏で幸せな日々を過ごせますように.


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年末雑感 …「ひと」が全て…

2017.12.23(23:35) 269

 今年もあっという間にあとわずかとなってしまいました.

 時節がらということもあって,患者数がものすごく増えており,土曜日などは立ち見席状態になってしまうこともしばしばです.長時間の待ち時間で大変なご迷惑をおかけすることも多く,申し訳ないと思っております.

 クリニックは来春,いよいよ開業10周年を迎えます.苦労も重ねつつここまでやって来ましたが,今までの経験を通じて痛感した,何よりも大事なこと,そして一番苦労することは,何と言っても「ひと」だと痛感しています.
 組織というものはその大小に関わらず,どんなにハードが良くても,それを動かすのは結局個々の人間です.特に生身の人間を相手にするこの仕事は,私も含めたスタッフの人間力が全てと言っても過言ではありません.

 開業当初は,私以外は女性ばかりの職場をトップとしてどう切り盛りしていいか試行錯誤の連続でした. しかし,私やかみさんの「ひと」を見る目が徐々に出来てきたのか?あるいは良い循環が出来ているのか,ここ数年当院には本当に素晴らしい人材が集まって来てくれており,仕事はやりやすいしクリニック内の雰囲気も頗る良好で,患者さんにも評判は上々のようです.

 そのオーラが良い影響を与えているのか,今年の当院はスタッフのおめでた続きでした.
 まず,長年事務の中心として勤めてくれてきたOさんが結婚,そして7月に元気な男の子を出産しました.それに続くかのように,なんと若手の看護師のSさん,Tさんが,ほぼ同時におめでたとなったのです.
 特に看護師のTさんの方は,長年不妊に苦しみ,一時は諦めかけていましたが,仕事の合間を縫って不妊治療に勤しんだ挙句,ようやく待望のベビーを授かり,先日少し早産ではありますが,元気な女の子を出産しました.

 実は当院は,それまでなかなかベビーを授からなかった職員が当院で勤務してから授かったことが多々あり,これまでも上記以外に事務スタッフ2人,看護師1人が当院で働きだしから幸せを掴んでいます.
 看護師のSRさんや事務のMさんもその1人で,出産後にいったん退職しましたが,今回の件で人手不足になったのを知って,今度は自分が役立ちたいとのことで,お子さん達を保育園などに預けて手伝いに来てくれています.

 若い世代の女性を雇用する時は,いずれおめでたとなって退職または産休となってしまう可能性があり,ただでさえ人手不足の昨今,当院のような小さな医療機関にとっては,ある意味「リスク」でもあります.退職や産休となればその間残ったスタッフの負担が増えますし,新しいスタッフを雇用するにしても,いいひとが来てくれるかどうか,悩みはつきません.
 しかし,よくありがちな人間関係のトラブルなどではなく,こんなおめでたいことが理由であれば,残ったスタッフも喜んで送り出すことができますし,いったん産休や退職になったスタッフも,育児が終わればまた戻ってきて助けてくれようというものです.それに少子高齢化が急速に進んでいるこのご時世,世の中に幸せの種を巻いたと思えば憂しい気持ちにもなれます.

 さて,今年も国内外で様々なことが起きましたが,紙面を賑わせているのは良い記事より圧倒的に悲しい記事の方が多いというのが誰しもの印象ではないでしようか?
 世界を見渡せば欧米を中心に自国第一主義のような排他的な勢力が次々と台頭し,相も変わらずあちこちで紛争やテロが頻発しており,北朝鮮問題にいたってはすでに戦争前夜とさえ言われている物騒な状態です.人々の経済格差はますます拡大し,地球温暖化による天災の多発は待ったなしの大問題です.国内でも経済,外交,安全保障,社会保障などあらゆる面で未曽有の難題に直面しているのは言わずもがなです.

 この先人類はいったいどこへ向かうのか?
 先行きの見えない不安と混沌と緊張に満ち溢れ,少しでも舵取りを誤れば人類の破滅にさえ向かいかねないこの時代,今こそ私たちの叡智が試されています.「世界」という巨大な組織も,結局は70億以上もの「ひと」の集まり,この組織が生き残るも滅びるも,すべてそれを構成する我々一人ひとりの責任ということです.

 来年は少しでも良いニュースが紙面を飾るように,心より祈るばかりです.


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更なる高みへ

2017.12.10(18:45) 268

  早いもので今年もあと1ヶ月となり,街はクリスマス一色です.クリニックも季節がら,風邪やインフルエンザワクチン接種の患者で溢れかえっており,一年の中で一番多忙な時期となりました.
 
  さて,12月3日,私の習っている合気道の昇段審査がありました.6年前に三段に昇進してからまたコツコツと稽古を積んできましたが,習い始めて18年目にして,何とか四段を頂くことができました.

 私はもともと,合気道の大きな流派の一つである心身統一合気道会に属し,神戸に帰って来てからはその兵庫県支部長であった琴地先生に教えてもらってきました.

 しかし数年前に宗主の藤平光一先生が亡くなって息子の信一先生が後継者となったのをきっかけに,もともと光一先生の内弟子として修行を積まれた琴地先生は,兵庫県合気道連盟,琴心館道場として独立を決意されました.
 このあたり,私のように医師が勤務先の大病院を離れて開業するのに似ています.
 この時,心身統一合気道会と琴心館のどちらに残るか選択を迫られることになり,何人かは前者を選んで去ったのですが,私はすでに向こうで三段を頂いていたこと,そして何よりも,組織が小さいほうが(といっても何百人もいますが)琴地先生のような合気道の達人に身近に教えて頂けるという良さを考え,琴心館に残ったわけです.
 
 よって今回はいつも教えて頂いている琴地先生にいつもの道場で審査して頂いたため,三段の審査時のように大阪支部まで出かけて多くの知らない先生方や観衆の面前で受けるというとてつもない緊張感はあまりありませんでしたが,それでもこの日に向けて半年くらい前から相方のKさんと自主練習を含めて稽古を重ねていたので落ち着いて臨むことができ,何とかミスなく終えることができました.

 合気道に限らず「道」とつくものの修行には終わりはありませんし,それなりの段位を頂いたらそれなりの責任というものが付いてまわると思います.

 今後もさらなる高みを目指し,自分自身の精神修養,健康維持のために,そして何より楽しい仲間たちと楽しく行える趣味として,長く続けていきたいと思います.


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禁煙後進国ニッポン

2017.11.19(20:55) 267

   我が国の受動喫煙対策として,今年3月,店舗面積30平方メートル以下のバーやスナックなどに限り例外的に喫煙可とする厚労省案が提出されましたが,自民党のタバコ議連等がこれに反発したため,新たな案が提案されたようです.
 それによると,飲食店内は原則禁煙だが,店舗面積150平方メートル以下は喫煙可とできる,ただ新規開業や大手チェーンの店舗では喫煙を認めず,既存店舗の営業影響を考慮した臨時措置と位置づける,とのこと.

 この案が実現すれば,例えば東京都内なら結局は90%の飲食店で喫煙ができることになるようです.

 タバコ規制の遅れている我が国は,オリンピックに向けて他の先進国並みにそれを進めるべきなのに,あろうことか与党自民党から反対意見が出てこんなバカげた骨抜きの折衷案が出されていることに,開いた口が塞がらないと思ったのは私だけではないでしょう.
 タバコ議連のみならず,JT(日本タバコ)など,本心は喫煙者を減らしたくない様々な利権団体が絡んでいるのは明白です.

 これはまさに,悲惨な銃犯罪が多発していても,政府に対して圧倒的な影響力を持つ全米ライフル協会の圧力により全く銃規制が進まない米国の状況と変わらないのではないでしょうか?

 そもそも喫煙が,受動喫煙も含めて多大なる健康被害と国家的損失をきたしていることは既に揺るぎなき事実です.私も長年の医師としての経験で,喫煙がいかに大きな健康被害を及ぼしているかを身を以て経験してきました.

 驚くべきことに,喫煙による経済的損失は,医療や介護費,それによる労働力の損失などを含めて年間6兆円を超えるといわれ,タバコ税等による収益約2.5兆円を遙かに凌駕しています.喫煙者の社会保険料や医療費の個人負担を上げるべきだという意見もありますが,至極真っ当な意見だと思います.

 日本という国は,少しでも画期的なこと,抜本的な改革をやろうとすると,かならず反対意見がでます.もちろんそれが民主主義の常道であり,健全なことなのでしょうが,厄介なのは既得権益を守ろうとする利己的な抵抗勢力の存在や,戦後長らく続く平和にすっかりあぐらをかいてしまい,急速な変化を望まない国民性が根底にあることは否定できないでしょう.

 日本人が世界に誇る和の精神は素晴らしいものですが,これが時と場合によってはマイナスに働き,物事が遅々として進まなかったり,外国とのタフなビジネス交渉でも負けてしまうわけですが,今回の件もまさにその典型でしょう.

 禁煙の推進はもう世界的な流れであり,地球温暖化対策と同じくらい喫緊の重要な課題であるにもかかわらず,時代に逆行するような姿勢は,世界中の笑い者になるだけでしょう.こんな国にオリンピックなど開催する資格などないのではないでしょうか?


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  1. 複雑な気持ち(02/04)
  2. 忘れられぬ年明け(01/10)
  3. 年末雑感 …「ひと」が全て…(12/23)
  4. 更なる高みへ(12/10)
  5. 禁煙後進国ニッポン(11/19)
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