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2009/10/12

理想の境地

 10月も半ば,すっかり秋本番となりました.はやいものでクリニックももうすぐ開業後1年半ですが,新型インフルエンザをめぐるゴタゴタや,スタッフの一部の入退職のため,なんだかんだと大変です.

 先日オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞しました.就任後まだ9か月で具体的な成果をまだ出していない時点での受賞に,本人はもちろん周囲も驚いているようです.平和賞の基準にはあいまいな要素もあると訊きますが,前政権の一国独裁主義から勇気ある脱却をし,核兵器の廃絶や環境問題への積極的な取り組みに対して,今後への期待も込めて与えたとのことです.しかしこの受賞に対しては賞賛の声と同時に,特に共和党サイドから,受賞を辞退するべきだとか,まだ成果も出していないのに受賞の権利はないといった批判の声も多いようです.

 私には彼が本当に受賞に値するかどうかは判断できません.しかし結局周囲の批判の声というのは,自分にはなし得ないことに対するねたみやそねみ(jealousy)以外の何物でもないと思います.彼が受賞したことに対して誰も迷惑を被ったわけではありません.素直に喜んであげればいいのに,と思うのは浅はかでしょうか?

 古今東西,人間社会においてねたみやそねみは不可避なものである,大げさに言えば,人類の歴史の変遷は,残念ながら多くの場合こういった単純な感情がきっかけになってきたといっても過言ではありません.

 さてクリニックには,80歳を超えた高齢者の方も多く訪れます.私は彼等と話をしていると,見事なまでに無駄なものがそぎ落とされ,すべてを達観した,泰然自若とした姿に,むしろこちらが癒されることがあります.
 ある高齢の男性は,縁あって私が心臓の手術をさせていただき,今も月1回きちんと通院されています.診察室に入ると私ににこやかに挨拶されて,サッと上半身裸になり,お願いしますとまたお辞儀をして椅子に座られます.口癖のように「先生のお陰で元気になりました.今はこうして元気に暮らせているだけで感謝しています」とおっしゃり,聴診ひとつ,検査ひとつ,説明ひとつにも笑顔で感謝の言葉を出され,帰り際には「ありがとうございました」と,深々と頭を下げて出て行かれます.たったそれだけのことなのですが,医師とはいえ,自分の息子より若い私のような若輩者に対するこの姿勢に,私の方が頭が下がってしまいます.

 人間,ねたみやそねみのような感情がなくなるためには,老境に達するしかないのでしょうか?しかし年をとっても争い事や人間性を疑うようなことが好きな人々も多いのを見ていると,それだけでもなさそうです.
 私も今まで様々なねたみやそねみを受けましたし,他人に対してそれを抱いたことも多々あります.また,クリニックを開業して人を使う立場になると,なおさらです.こういった感情からいっさい解き放たれ,泰然自若として自分のなすべきことだけを粛々とこなし,どんなことにでも感謝できような心境になれば,どれだけ気持ちが楽でしょうか?
 そういった境地に達するにはまだまだ修行が足りませんが,少しでも近づきたいと思うこの頃です. 
 
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