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Dr.OHKADO's Blog

. しろーい,まるーいやつ

 今日から4月,今年も多くのフレッシュマンたちが学校へ,会社へと,気分も新たにして新天地に巣立っていくことでしょう.
 思えば私も2年前,25年間にわたる勤務医生活を終え,翌月からの開業に向けて期待と不安の入り混じった気持ちで今日この日を迎えたことを,昨日のことのように思い出します.

 先日,あるお年寄りの患者さんとの会話のひとこまです.
 「○○さん,今日はワーファリンの利き具合を調べる血液検査をしますね」
 「え?バ,バファリン?」
 「いえ,ワーファリン,ワ・-・ファ・リ・ンですよ.ほら,いつも朝3錠飲んでいる血液サラサラの薬ですよ」
 「え?血液なんやて?そないな薬飲んでましたっけ?」
 「朝,赤いパッケージに入った白い丸い薬ですよ.真中に線が入ってるでしょ?」
 「あー,あのしろーい,まるーいやつね,はいはい」
 「あれがね,ワーファリンといって,○○さんの身体に血栓ができないようにしている大事なお薬なんですよ」
 「あー,そうでっか,いやア,私はバファリンやから風邪の薬かと思ってました.血栓ができなくする薬なんですか,そんなん飲んどったんですなア」
 「バファリンじゃあないですよ,ワーファリン,ワ・-・ファ・リ・ンですよ.もう3年ぐらい飲んでるでしょ」
 「そうやったんですか,年とるとあきまへんなあ,薬の名前なんかむずかしゅうて全然覚えられまへんわ,それに毎日よーけ飲まなあかんしねエ」  
  
 でもこんな会話は,実は日常茶飯事です.

 最近は大抵薬局からお薬手帳が配られており,それを持ってきてくださるとこちらも楽なのですが,それを忘れた場合は大変,それこそ「しろーい,まるーいやつ」とか,「赤くて細長いの」とかなるわけです.こちらもありったけの想像力を働かせてそれこそ何百種類とある薬の中からその薬を当てようとするのですが,クイズやってる場合とちゃうで,トホホ…なんて気持ちになってしまうこともあります.

 しかし,よく考えれば不思議なことなのですが,薬の名前は日本で作られたものでも,どういうわけかカタカナ,しかもフランス語やドイツ語ではなく英語的な名前なのです.
 ですからこれは薬の名前を覚えられない患者さんたちが悪いというより,日本人,特にカタカナ用語にアレルギーのある世代の方々などには当然のハンディキャップなのかもしれません.

 最近は医療費抑制の流れからジェネリック薬品の使用が推奨されているのは周知のとおりです.それは致しないこととしても,その名前がまたややこしい……,例えばT製薬の「アンプラーグ」という有名な薬のジェネリック薬品は,「塩酸サルポグレラート」,こんな名前,我々医療従事者でも舌をかみそうなのに,ご高齢の患者さんたちに覚えられるわけがありません.

 ところで当院は外人の患者さんも多いのですが,彼等はほとんどの場合自分が飲んでいる薬の名前とその量をきちんと覚えているようです.自己管理の意識が非常に強いという彼らの精神的土壌がゆえなのでしょうが,英語的な薬の名前は,特に英語圏の人たちには馴染みやすいのは当然かもしれません.

 だからそれならば,日本で出回っている薬の名前だけでも,日本人になじみやすいように,いっそのこと「さくら1号」とか「さらさら2号」とかしたらどうかとさえ思ってしまいます.有名な正露丸や救心のように漢字でもいいかもしれません,ワーファリンなら「防塊丸」とか…
 
 まあそうではあっても,最後は結局,自分がどういう病気で,何の目的で,どんな薬をどれほど飲んでいるのかということをきちんと意識していただくということが最も重要なことであるのは否めません.
 今後も「バファリンではなくて,ワーファリン,ワ・-・ファ・リ・ンですよ」はずっと続きそうです(笑)
  
 
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Dr.Ohkado

Author:Dr.Ohkado
神戸市中央区新神戸駅ちかく,神戸芸術センタービル内医療モールにある循環器科を主とする開業医です.
徒然なるままに,日々考えていることをエッセイとして書き綴っていきます.
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