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2010/03/22

穏やかな気持ち

 今年は全国的に桜の開花が例年になく早いとのこと,今日は通勤で乗るバス通り沿いに並んでいる桜の木がもう一分咲きくらいとなっていました.これでは花見をする間もなく散ってしまうかもしれません

 先週の土曜日は午前の診療後に岡山へ手術の出張に行きましたが,いつも座れる新幹線が超満員!その時初めて世の中は3連休だったのだと気付きました(笑).

 今日はその最後の日,かみさんと北区にある人気の日帰り温泉に行ってきました.ゆっくりと食事をした後,露天風呂やサウナなど,物珍しさも手伝って片っぱしから入り,最後はマッサージチェアにゆっくりと身を委ね,身も心もリラックスできました.
 着替えをしようと思ってロッカーを開けると携帯電話に着信があったのに気付きました.見覚えのある番号だったのですぐに電話をすると,当院にかかりつけの,ある女性の患者さんでした.身体の具合や飲み薬のことで不安があるとのことでしたが,ゆっくりとお話をお聞きした後で,何かあればいつでもまたお電話をくださいネと締めくくると,心から安心されたようで,とても感謝してくださいました.

 勤務医時代,心臓血管外科の第一線で働いていた時は毎日が戦争のようでした.自分の受け持ち患者に何かあれば昼夜を問わず電話がかかってきます.ましてや状態が急変した時や,解離性大動脈瘤など待ったなしの緊急手術が入った時は,友人と楽しく飲んでほろ酔い気分であろうが,家族と旅行に出かけていようが,正月や盆に帰省していようが,容赦なく病院に呼ばれました.患者さんの命に関わることだから当然のこととは分かっていても,特に深夜に携帯電話やポケットベルがなった時は,もうこの仕事を辞めようと思ったことも数知れずでした.労働基準法などどこ吹く風,残業が月100時間を超えるのは日常茶飯事でした.おそらく世の中の大半の外科医と同様に,私もほとんど医師としての使命感だけで疲労困憊した身体に鞭打っていたのだと思いますが,それも30歳台くらいまでならともかく,年齢が行くにつれ限界に近づいていました.最後の1-2年は種々のストレスから,とうの昔に治っていたはずのアトピーがものすごくひどくなってしまいました.

 開業するとそれはそれで大変なのは否定できません.経営や人事などは慣れていなくても避けて通れないばかりか,自分や家族やクリニックの死活問題にも関わります.

 しかし私のように心臓血管外科をやっていた者からすれば,身体のしんどさは比べるべくもありません.身体の調子のみならず,精神的にも楽です.休日や深夜に突然呼び出されることもそうそうありません.自分の手元に残る手取り収入は勤務医時代の最後に比べればまだまだまだ些少ですが,その代わり人生におけるかけがえのないものを取り戻せたような感じがします.肌もすっかり綺麗になりました(笑)

 心に余裕が生まれれば他人に対しても心から優しくできます.たとえ今日のような休みの日に,大したことはない(というと失礼ですが)用事で患者さんから電話がかかってきても,こんな私を頼りにしてくれている,そして私に相談することでその方の不安が解消できるのであれば,それほど嬉しいことはない,と前向きに思えるようになりました.
 
 今や未曾有の不景気で失業率や非正規雇用が激増し,自殺や痛ましい事件が毎日のように紙面をにぎわせています.人間関係が殺伐としてしまっているのも,こんな状況では誰もが自分のことに必死で他人のことを気遣う心の余裕もないからなのでしょうか.次元が違うとはいえ,以前の自分の状態もまさにこんな感じだたったのかもしれません.

 人間は,自分がいかに心身共に安らかにいれるか,これこそが結局他人に対しても優しくできる気持ちにつながってくるのだと強く感じています.
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