神戸市中央区、新神戸駅近くの循環器科専門医が綴るブログです。
 今年もはや2月,日本列島は今最も寒い時期です.1月中旬からインフルエンザが猛威をふるっており,クリニックでも毎日検査キットが飛ぶように使われています.

 さて先日,あるご高齢の男性が,最近歩行時などの息切れがひどくなったとの訴えで,その方の友人であり当院に通院中の別の患者さんに連れられて受診されました.

 男性によれば,自分は今までたいした病気もしたことがなく普段はいたって健康だとのこと.しかし,薬手帳をみると降圧剤や抗血小板剤など多くの循環器系の薬が毎月きちんと処方されているではありませんか.そのことを問うと,その先生はかかりつけ医なので,風邪などの時はもちろん,毎月通院して薬をくれるのでとりあえず飲んでいる,でもなんの薬かは全然知らないと平気でおっしゃるのです.

 果たして,胸部レントゲン写真では右肺野に大量の胸水が認められ,心不全や癌性胸水が疑われました.かかりつけの先生にも電話をして事情を説明,入院が必要と思われたため直ぐに近隣の病院に紹介しました.

 別の日,あるご高齢の女性が来院されました.長らく近隣の医院に通院していたがそこの院長先生が高齢にて引退,閉院となったので,今後当院で診て欲しいとのこと.

 降圧剤の他にビタミン剤,制酸剤など数種類の薬が投与されているようでした.
この患者さんに,前医での通院間隔を尋ねたところ,なんと毎週通院していたとのこと.また普段の健康状態や薬の内容について尋ねたところ,やはり前述の男性と同じような答えでした.患者さん曰く,毎週通って血圧を測ってもらうだけだが,すっかり他の患者さんたちと仲良くなり,待合室で話をするのが楽しみだったとのことです.

 実はこんな例は,枚挙にいとまがありません.
 少子超高齢化社会となり,しかも核家族化で独居老人が増える中,医療機関が病気を治すために訪れる場所というよりも,いわば社交の場と化しているということでしょう.
「最近〇〇さん,来てまへんなぁ」,「病気とちゃいますかねぇ」なんていう冗談のような話になるのです.

 二番目の患者さんについては,血圧が安定していたら毎週通う必要など全くないし,混んでいる時に長く待っていただくのも気の毒なので,月1回で十分ですよ,と彼女の負担も慮ってお話ししたのですが,彼女にとっては「社交の場」を減らされてしまったのではないかと考えると,本当にそれでよかったのかとさえ思ってしまいます.

 介護だ在宅だとかしましく叫ばれている昨今ですが,彼女にとっては,医療機関に毎週通って他の患者さんたちと話に花を咲かせることが,実は効果的なリハビリになっていたのではないか?医療費の無駄といってしまえはそれまでですが,通院が少なくなって足腰が弱り他人と話す機会も減ってボケてしまい,介護が必要になってしまったら結局同じことではないか?と考えると,複雑な気持ちになります.

 医療機関は病気を治すために利用するところであり,国家財政を脅かすほど高騰している社会保障費を考えると,少しでも無駄な投薬や通院を減らした方がいいのは自明の理ですし,国の方針もその方向です.

 しかし,特にご高齢の方々にとって医療機関が一種の「見守り」の役目を果たしていると考えれば,ある程度「社交の場」であることが許容されてもいいのかもしれません.

 ただ,自分が何の病気でどんな薬を飲んでいるのか,せめてそれくらいのことは知っておいて欲しいと思います.さもなければ一生懸命治療している側としてもやり切れない気持ちですし,きつい言い方をさせて貰えば,国民の血税や保険料で支えられている医療保険制度に対して失礼だと思うのですが,いかがでしょうか.薬は犬のエサではないのですから(笑)


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【2018/02/04 22:22】 | 日々是エッセイ
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