Dr.OHKADO's Blog

. 「大きな病院」よりも…

 日本人は何かというと「大きな病院」が好きなようです.

 たとえば,どんな医者が診ても風邪以外にあり得ないと思うような時でも,肺炎や肺癌が心配なので「大きな病院」ですぐに精密検査を受けたいというような人がいます.

 でもさすがに風邪くらいで受診されては,重症患者の診療で日夜多忙を極める大病院はたまったものではなく,昨今問題になっている医師の過重労働や医療崩壊の一因となっています.

 諸外国と違い日本では,病気になればいつでもどこでも,そしてどんな医療機関にも自由に受診できるというフリーアクセスが特徴的です.この仕組みが世界に冠たる国民皆保険制度と相まって我が国を世界一の長寿国たらしめてきたのですが,皮肉にもこういった弊害を生み出してしまったのです.

 さすがに最近は,まず近隣のクリニックを受診し,必要ならばより高度の医療を行える医療機関に紹介してもらうという仕組みが定着しつつあり,今年度の診療報酬改定でも,一定規模以上の大病院に紹介状なしで受診した時は定額の窓口負担が課されることとなりましたが,ある意味当然の成り行きとも言えます.

 そもそも「大きな」病院とは何なのか?
誰もが思い描くのは,その地域の中核をなすような総合病院や大学病院で,ベッド数や診療科目が多く,最新の診断,治療設備が充実していることのようです.さらに,書店に並ぶ病院のランク付け本の上位に載っていたり,マスコミに出るような有名なドクターがいれば完璧でしょう(笑).

 日本人が肩書きやブランドに弱いのは,生来の国民性によるのでしようか?
私がまだペーペーの研修医のころ,勤務先を尋ねられて⚪️⚪️大学病院です,などと答えると,ほー,大学病院のお医者さんですか❗️などと言われたことがよくありました.言うまでもなく,その方は医師としての私の技量など知る由もなく,私の勤務先に感心していただけなのです.

 しかし何よりも忘れてはならないのは,いくら「大きな」病院でも,最終的に重要なのはそこで働く医師や医療関係者ひとりひとりの資質であるということです.ハードがいくら良くても,それを使いこなすのは結局ソフトである人間だからです.

 だから,何々病院が有名だからとのことで受診しても,必ずしも満足する結果とはならないことも多いのは当然です.

 例えば大学病院に紹介すると,若いインターンみたいな医者に実験台にされた,などと憤慨される方もいます.言うまでもなくインターンという言葉は既に死語ですが(笑)まあそれはともかくとして,教育は大学病院の使命なのですから,若い研修医が医療行為に参加するのはやむを得ません.私を含めあらゆる医師たちも皆そうやって育てられたのです.

 東京女子医大に在籍中,都内の某病院の心臓血管外科に派遣されていた時のこと,ある中年の男性が心房中隔欠損症と診断されました.患者さんは当然ここでオペを受けられると思っていたら,なんと,色々調べた結果,東京女子医大で受けたいと言われるのです.

 この病気は心臓手術の中でも初歩の手術で,心臓外科医を目指す若手医師の登竜門でした.症例数の豊富だった女子医大でも,この手術は私を含め若い医師がほとんど術者をしていました.患者さんの命が最優先ですから,指導医に助手をしてもらいながら万全の体制で行うのは当然ですけれども,少なくとも教授が直接執刀するようなことは,特別の場合を除いて殆どありませんでした.

 この患者さんの場合,少なくとも当時は国内トップクラスだった症例数と日本の心臓外科のメッカとしてのブランドで女子医大を希望されたわけですが,この内実を説明したところ,眼を白黒させて驚いていました.

 このようなことは,大学病院に限ったことではなく,マスコミで有名になったから,皆が受診しているからと言って受診しても,3時間待たされて3分診療だったとか,医師の態度が悪かったとか,全然説明してくれなかったとか,色々たらいまわしにされて結局診断がつかなかったとか,枚挙に暇がありません.

 いずれにせよ,「ブランドのある病院」や「大きな病院」にかかることと,自分が望む医療が受けられることとは別だということです.

 しかし,患者さんにそこまで求めるのはもちろん酷ですから,受診したい医師や医療機関がわからない場合は,いかに良い医師,良い医療機関に紹介できるかということが紹介する側としても「実力」の見せどころとなるわけです.

 私も,患者さんの希望は尊重しつつも,長い医師生活を通じて培って来た幅広い人脈を駆使して,出来るだけその人となりや技量を知っている医師に紹介するようにしていますし,その場合病院の規模やブランドなど何の関係ありません.
「いい先生にすぐに紹介して下さって感謝しています」などと言われれば嬉しいものです.

 プライマリーケアを担う我々中小医療機関の医師は,必要な時は時期を逸せず信頼できる医師,医療機関に紹介すること,患者さん側もネットやメディアに溢れる情報にいちいち惑わされないこと,そして何よりもそのためには,医師と患者さんとの間に良好な信頼関係が築かれることが何よりも重要なのは言うまでもありません.


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Dr.Ohkado

Author:Dr.Ohkado
神戸市中央区新神戸駅ちかく,神戸芸術センタービル内医療モールにある循環器科を主とする開業医です。
徒然なるままに,日々考えていることをエッセイとして書き綴っていきます.
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