Dr.OHKADO's Blog

. 魔物と奴隷?

 スマホやタブレットに続く新たなる情報機器として,眼鏡型端末が世に出つつあるとのこと,ここ最近のIT技術の進歩には驚かされるばかりです.
 
 今や私たちは世界中どこにいても,そしていつでも,最新の情報を一瞬にして知ることができ,それらを地球の裏側の人たちとさえもリアルタイムでやり取りすることが出来ます.
 今や自宅にいながらにして買い物をしたり,旅行の予約をしたり,銀行に入金したり,ネイティブの外国人に外国語を習ったり,職場の会議に参加したりすることなど当たり前,子供時代にSFの本で読んだ未来の姿を彷彿とさせます.

 つまり,ITの進歩は,私たちに,商店や図書館や旅行社や銀行や語学学校や会社に行く「手間」を省かせて多くの時間的「ゆとり」を作ってくれた,とでも言えるでしょうか.

 しかし…です.

 私が最近強く感じているのは,実際「ゆとり」ができた,と感じている人がいったいどれほどいるのか?ということなのです.
 それどころか,実のところ私たち現代人は最近,いつも毎日が多忙でせわしなく,何か時間に追われるように感じて生活するようになってはいないでしょうか?

 情報を一瞬にして大量に得ることができ,そしてやり取りできるということは,言い換えれば日常生活や仕事においても常にそれが求められるということです.
 誰もが携帯電話やパソコンを扱うことが求められている時代に,自分だけ普通の電話や手紙でやり取りするとか,図書館に出向いて本で調べますというわけにはいかなくなっているわけです.
 言い換えれば,皮肉にもIT機器は,私たちに時間的余裕ではなく,束縛さえ与えてしまっているともいえます.
 
 それからもうひとつ思うのは,IT機器を使って行う仕事は,よく考えれば,全てが生活に必須なもの,生産的なもの,自己を高めるものというわけでもないのではないか,ということです.

 たとえば,パソコンの設定や,ソフトのダウンロード,特に目的のないネットサーフィンやゲームによる時間の浪費など,その最たるものでしょう.

 瞬く間に世界中に普及したフェイスブックも同じことかもしれません.
 私も2年くらい前にフェイスブックに登録して,最初の頃は毎日の様にウォールの記事を読んだり,自分も「いいね」を押したり,時には書き込みをしたりしていましたが,最近,だんだん億劫になってきて,正直どうでもよくなってきました.

 今まで疎遠になっていた知り合いに出会ったりする仕組みは画期的で,また複数の中間でグループを作るとチャット感覚で書き込みが出来たりするなど,重宝することも多いのですが,「友だち」が増えれば増えるほど読む記事が増えて時間がかかります.
 でも記事といっても,書いた人には失礼ですが,その大半は,今日何を食べたとか,どこそこに出かける途中だとか,はっきり言って他人にとってはどうでもよいことばかりなのです.

 つまりフェイスブックというのは,それまで垣間見ることのできなかった知り合いの行動を垣間見て,共感したり羨ましがったりするという行動に過ぎず,別にそれがなくても困るわけでもなんでもないわけですが,ついつい見てしまうと,時間があっという間に過ぎていく,まさに魔物のような存在ではないかとさえ思うのです.

 さらには,パソコンもスマホも毎年のように新しいモデルが出て,自分は今までの機種で慣れているから買い替える必要はないと思っていても,これがIT業界の戦略なのでしょうか,ソフトや周辺機器までバージョンアップされるから,結局買い替えたり,新しいソフトをインストールしたりしなければならない.さらにそれに伴い,データのバックアップや移動など,単なる「作業」によって,1日などあっという間に過ぎてしまう.

 先日も院長室のパソコンをやむなく買い替えざるを得ない状況になり,家電ショップに行くと,OSはすでにウィンドウズ8の新しいモデルばかり.慣れているウィンドウズ7やビスタのモデルはもうほとんどなく,購入しても保証もできないなどと,店員もそっけない返事…
 やむなくウィンドウズ8のモデルを買いましたが,これまでと大幅に変わってしまった操作方法やディスプレイに悪戦苦闘している状態,まさにIT業界に振り回されている,といった感がピッタリです.

 ITで便利になった,なったといいながら,実は1日の大半をITに縛られている,LINEやメールの返事が来ないと不安,こちらも早く返事しないと不安,携帯やスマホを忘れて出かけると不安,情報に取り残されると不安,ウィルスが入ると不安,個人情報が漏れると不安… 
 実はITは私たちに多くの物理的な「手間」を省かせた一方,心理的には何一つ安心感もゆとりも与えていないのではないか?とさえ思うのです.

 人々と直接会って会って心ゆくまで話をしたり,新しい本の新鮮なにおいを感じながらページをめくったり,古い文物に直接触れて先人の偉業や労苦に想いを馳せたり,手書きのはがきを心待ちにしたり,これから旅する見知らぬ土地に想いを馳せたり…と,人間が古来親しんで来た生活のリズムこそが,つい最近までは当たり前でした.
 
 なのに,人間が長きにわたって培ってきたそんな生活リズムを,ITはたったここ十数年で大きく歪めてしまったというと,言いすぎでしょうか?

 先日ある知り合いと飲む機会がありましたが,彼は今年家族で沖縄に旅行をしたとのこと,その旅行で彼が一番満足したのは,どこそこの観光スポットへ行ったことでもマリンスポーツをしたことでもなく,日がな一日,ただぼーっと海岸で寝そべっていた時だったと言っていたのは,本当に印象的でした.

 そうはいっても,もうパソコンもスマホも捨てて過去に逆戻りするわけにもいきません.
 私たちにできることは,せめてITの奴隷にならないように賢くなることでしょうが,IT技術の進歩があまりにも速いがゆえに,私たち自身がそれについていけていないといったところが実態でしょう.

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Dr.Ohkado

Author:Dr.Ohkado
神戸市中央区新神戸駅ちかく,神戸芸術センタービル内医療モールにある循環器科を主とする開業医です。
徒然なるままに,日々考えていることをエッセイとして書き綴っていきます.
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