Dr.OHKADO's Blog

. 孤独ということば

5月ももう終盤,ここのところ気温がぐんぐん上昇し,初夏の陽気のような日々が続いています.

 先日,仙台循環器病センター時代に親しくしていた臨床工学士のH君が神戸を訪れてきました.彼とはメールなどで時々やりとりしているものの,直接会うのは実に5年ぶりで,時の経つのも忘れてよもやま話に花が咲き,本当に楽しいひと時を過ごしました.
 帰り際,彼の泊まっている三宮駅近くのホテルの前で,再会を約束して固い握手を交わして別れを告げた私の心は,久しぶりに彼の飾らぬ暖かい人柄に触れた喜びで,すがすがしい気分でした.

 さて,開業前にあたって聞いていたことのひとつは,開業医は孤独であるということでした.これはある程度覚悟はしていましたが,開業後まる4年を迎えた今,まさに日々実感するところです.

 何よりも病院時代は,他にも医師がたくさんいましたから,同じ目線で,仕事のみならず,時にはプライベートな相談を互いにすることもでき,仲間意識や安心感を感じました.
 しかしクリニックでは医師は私ひとりです.もちろん病診連携や診々連携を通じて他の医師と仕事上の関係はありますし,医師会の会合などで他の先生方と接することも少なくはありません.ですから懇親会で楽しく飲みながら,経営などのことに話が及ぶこともありますが,同業者の場合は,お互いあまり突っ込んだ話をするのは一種タブーのような感じで,つい表面的な話になってしまうのはやむを得ません.

 そして当然のことですが,開業医は他の職種と同様,自分が組織のトップに立ち,経営や人事その他全ての最終責任者であるということです.
 勤務医時代は医師である私も他のコメディカルも被雇用者という対等の立場で,病院長や上層部に対して言いたいことを言っていればよかった.でも今の自分は,小さな組織ではあっても,あの時突き上げを食らっていた,まさにその院長職にいるわけです.

 「人は堀,人は石垣,人は城」という武田信玄の有名な言葉があるように,組織の要は「人」です.
 ですからスタッフを大事にし,できるだけ働きやすい職場にするのは私の責務ですし,私も含めて全員が楽しく働ければ,本当にこれほど嬉しいことはありません.でも時には経営のことを優先せざるを得ず,希望をかなえてあげられないことや,私の未熟さゆえに彼等に嫌な思いをさせてしまうこともあり,日々反省しきりです.

 クリニックには,私の至らぬ点を補うべく,他のスタッフが直接私に言えないようなことや貴重な助言を歯に衣着せずしてくれる参謀役の看護師さんもいますし,内助の功で経営の裏方を支えてくれているカミさんにも頭があがりません.

 それでもやはり,院長職というのは孤独だとつくづく思います.

 クリニックの患者さんには会社の経営者や,スナックやクラブのママさんなども多くいますが,やはり彼等の多くも経営者は孤独だということを口にされ,妙に納得してしまいます.
 
 もちろん心から信頼し合えるH君のような友人,共にお酒を飲んで悩みを打ち明けられるような友人もいないわけではありませんし,少なくとも家族は陰になり日向になり私を支えてくれています.

 でも,経営者は周囲からの助言や援助があったとしても,悩みを聞いてもらったとしても,最終的には自分を信じて自分の責任で判断をして行かなければならない…,というよりそれが出来なければ失格なわけです.

 でも誰かが述べていましたが,経営者に限らず,人間とは結局は孤独な存在で,そして人生とは孤独との闘いだとも思うのです.
 携帯電話に登録したアドレスの数や,もらった名刺の数や,facebookの「友達」の数など,全く何の意味もなさないのだと思います.

 もちろん価値観を共有したり,支えあうことのできる家族や友人がいるということは大事なことで,人生を豊かで楽しいものにしていると思います.
 でも,誰でも周囲の人とは相いれない考えや価値観を持っているでしょうし,ただ他人と仲良くしたいからといって他人に迎合ばかりしていては,自分というものの存在が意味をなくしてしまうでしょう.だから大げさかもしれませんが,孤独,もっとかっこよく表現すれば「孤高」の精神のようなものは,自己の確立のために,ある意味必要なものなのかもしれません.

 そんなことを考える今日この頃です.

 でも,そうはいってもやっぱり私は所詮凡人なのか,そこまで割り切れてはおらず,さびしがり屋だと思います(笑).
 職場で若いスタッフたちと働いている時はもちろん,気のおけない友人たちと飲んでいると本当に楽しいですし,仕事で疲れて帰宅したときに家の灯りがついていて,暖かい食事が用意されていると,心からホッとします.

 経営者は孤独である,人生とは所詮孤独である,などと物知り顔に(笑)自分を納得させつつも,いつも心のどこかには,他人と触れ合うことによるぬくもりを求めているもう一人の自分がいるのだと思います.

  

 
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. 地方都市に喝采

 このゴールデンウィークに家族で金沢に旅行してきました.大阪から特急サンダーバードで片道約3時間,たった2日間でしたが,北陸随一のこの街の雰囲気を満喫できたいい旅でした.

 いうまでもなく,加賀百万石として知られる金沢といえば,かの前田利家に始まる加賀藩が金沢城を中心として築きあげた城下町で,江戸時代には江戸,京,大阪に次ぐ大都市だったといわれています.

 金沢城や兼六園を中心とした城下町としての風情を街全体にたっぷり残しつつ,近代的な地方都市として穏やかに発展しており,また街中のいたるところに溢れる豊かな緑が,訪れる者を癒してくれているようでした.
 日本三大庭園のひとつとして有名な兼六園の素晴らしさは言うまでもありませんでしたが,あちこちに残された武家屋敷や茶屋町は,昔の日本にタイムスリップさせるような趣さえあり,味わい深いものでした.
 日本海産の新鮮な魚介類がたっぷりの海鮮丼や名物の治部煮,地元ならではの地酒と,食の方も楽しめたのはいうまでもありません.
 一説によると金沢は秋田,福岡と並んで日本三大美人の産地らしいですが,この真偽のほどはともかくとして,街行く女性たちが心なしか皆美人に見えたのは私の思い込みでしょうか(笑)

 徳川家康がこの前田家の繁栄を恐れてあらぬ嫌疑をかけて取り潰そうとした時,賢夫人として知られる前田利家の正室,まつ(芳春院)が自ら人質となって江戸に下り,前田家を守ったことは有名な話です.
 今の金沢の街の存在感も,先人たちがそうやって命を懸けて守り抜いてきた意地と尊厳に裏打ちされているのかもしれません.

 私は神戸に帰ってくる9年前まで金沢と同じ城下町である仙台に住んでいましたが,街のメインストリートである青葉通りのケヤキ並木の美しさや,広瀬川の悠久の流れは今でも忘れられません.東京や大阪にははるかに及ばないものの,東北随一の大都市としての存在感があり,伊達正宗が築き上げた美しい城下町としての風格や威厳をいたるところに感じさせ,神戸などに比べ冬はちょっと寒いことを除けば,とても住みやすい町でした.

 なんでも東京一辺倒の昨今,地方の時代と言われるように,こういった地方都市がもっともっと発展することこそが,産業の発展や国民の幸せという見地から,今後の日本にとって極めて大事なことだと考えます.
. プロフィール

Dr.Ohkado

Author:Dr.Ohkado
神戸市中央区新神戸駅ちかく,神戸芸術センタービル内医療モールにある循環器科を主とする開業医です。
徒然なるままに,日々考えていることをエッセイとして書き綴っていきます.
ご意見下さい.

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