Dr.OHKADO's Blog

. 大学生にエールを

 3月もそろそろ終わり卒業式シーズン,多くの人たちが新たな旅立ちへの飛躍を誓っていることでしょう.

 先日は次女の大学の卒業式でした.華やかな袴姿で同級性たちとともににこやかに微笑んでいる彼女の写真を見て,私は30年近くも前に臨んだ母校の卒業式に思いを馳せていました.

 当時の国立大学は,入学試験の時期によって1期,2期に分かれていました.自宅から通学圏内にあったある1期校の大学入試に落ちたため,やむを得ず受けた2期校が岐阜大学でした.やむを得ないというと語弊がありますが,1期校はまず大丈夫だろうとタカをくくっていたため,とりあえず関西圏に一番近い2期校を滑り止めとして選んだだけで,どんな大学かもほとんど知らず,本当にそこに行くことになろうなどとは夢にも思っていませんでした.

 しかし何の因果か自信のあった1期校に不合格,滑り止めとして受けることとなった当時の岐阜大学の医学部は,1期校である東大や京大など難関大学の医学部を落ちてきた学生が集まっており,しかも競争率はなんと27倍,2浪や3浪もザラで,そんな猛者たちと競争して合格することなどほとんど不可能と思われ,浪人も覚悟しました.

 ところが人生とは面白いもの,なんとその難関を制して通ってしまったのです.そんなわけで,私は18歳にして初めての一人暮らしを,しかも岐阜という親戚も知己もいない未知の土地で始めることとなりました.

 高校を卒業したばかりの私には初めてのことばかり,最初は不安感もありましたが,その後の大学生活は今になって思えば楽しく充実したものでした.もちろんそれを支えるべく仕送りを続けてくれた父母には今でも感謝しています.

 なにせ仕送り学生の分際,家庭教師などのアルバイトもしたものの決して贅沢はできませんでしたが,剣道部や合唱団などのクラブに所属して忙しく活動し,大学祭の委員をつとめ,友人たちとあちこち貧乏旅行やスキーにでかけ,よく夜遅くまで安酒を飲み交わし,時には熱く議論を交しました.時効となってしまいましたが,酔っ払ってみんなでバス停を移動させてしまったり,横断歩道に大の字に寝てしまい,車を止めてしまったこともあります(笑).そして無二の友人たちができたのも,中高と男子校育ちだった私が女性を知ったのも,失恋したのも,悪い?先輩にそそのかされて初めて風俗に行ったのも(笑),この時期でした.
 今思えば赤面してしまうようなこと,未熟だったと反省してしまうことも多々ありますが,それもこれも若さゆえ,今となってはいい思い出であり人生経験です.

 もちろん勉強もしました(笑).2年間の教養課程は医学とは関係のない講義ばかり,正直いってモチベーションを失いそうでしたが,専門課程でいよいよ医学の勉強が本格的に始まった時は,みな心新たに張り切っていたのを思い出します.解剖学,生理学,生化学,病理学といった基礎医学に始まり,内科学,外科学,小児科学,産婦人科学といった臨床医学に進むにすれ,勉強することは山ほどありました.
 試験も各科目の節目ごとにあり,不合格だと再試験,再々試験と合格するまで受けさせられました.ポリクリといわれる病棟実習が始まって,白衣に身をつつんで患者さんと接するようになると,医師として働く自分の将来の姿をはっきりとイメージするようになりました.
 5年生の終わりころからはいよいよ国家試験を意識し,分厚い問題集を片手に勉強にいそしみました.晴れて合格して医師免許を手にしたときの安堵感,達成感,そしてそこはかとなく感じた使命感は忘れられません.

 岐阜という未知の土地に生まれて初めて一人暮らしをして医師を目指すという,思ってもみなかった人生,しかしこれは今から思えば,私が親の庇護から離れて独立し,人間として一回りも二回りも大きくなれるように,神様が仕組んでくれた運命なのかもしれません.

 学生の本分は勉強であることは間違いありませんし,最高学府である大学は,社会や国家に役立つような人間,国際的に活躍できるような人材を育てる場所であるべきことは論をまたないでしょう.
 
 しかし同時に,長い人生において,大学時代ほど自由な時間に満ち溢れ,束縛がなく,どんなことにでチャレンジでき,失敗してもやり直しが効き,そして未来に向けて無限の可能性を秘めた時代はないと思います.
 
 ただ悪いことには,不況の真っただ中,学生にとっては未曾有の就職難で,3年生になったころから肝心の学業そっちのけで就活に励まなければならないというのは,やりきれません.これでは大学は学問の府というより,就職するためだけの単なる通過点でしかなくなってしまい,優秀な人材が育つはずはないのではないでしょうか.

また,国公立大学の授業料は私が学生だった時代は非常に安く,経済的に恵まれない人でも努力すればだれでも入学する機会を与えられていたにもかかわらず,国策によりどんどん上昇し,親の経済格差が教育格差を生んでしまう状態になっているのは嘆かわしいことです.

 少子化の影響も手伝って大学全入時代となった昨今,分数のできないような低学力の学生さえいるというゆゆしき事態もあるのはともかくとして,選ばれる側になった各大学も,ただ学生を怠惰に過ごさせるだけのレジャーランドとならないように,いかにその魅力を高めていくかという努力も求められているでしょう.

 やる気のある若い人たちが,努力さえすれば経済力に関係なく平等に大学で学ぶ機会を与えられ,そしてその後の人生を決めるもっとも重要な時期であるその数年間を,可能な限り有意義に過ごせるように,そして努力や才能や経験が花開いて世界に通用するような人材が育つことができるように,今いちど考えていかなければならない時期にきているのではないかと思います.
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. 最後の砦(とりで)

 未曾有の甚大な被害で我が国を完膚なきまでに打ちのめしてしまった,あの忌まわしい東日本大震災からちょうど1年となった今日,日本国内のあちこちで犠牲者を弔う慰霊祭が行われました.

 天皇陛下が出席されていた東京の国立劇場で行われていた式典をテレビで見ていた私も,地震が起こった午後2時46分,合図にあわせて静かに黙祷しました.
 
 今回の震災では,その直後から日本中そして世界中から力強い支援が数多く寄せられ,人の心の温かさに涙した人々も多かったと思います.

 その中でも今回は特に,自衛隊の献身的な活躍が大きクローズアップされ,テレビでは特集番組も組まれていました.

 日頃からいかなる困難な状況でも切り抜けるべく厳しい訓練を重ねている彼等は,国家や国民を守ることがその責務とはいえ,自分たちの身の危険も顧みず,汗と泥にまみれて日夜人命救助に奔走邁進しました.
 その姿をみて,同じ日本人として,今回ほど彼らの活動に感動し,感謝し,愛国心を鼓舞されたことはなかったのではないでしょうか?
 しかも隊員たちの中には,自分自身や家族も被災者であった人たちも数多くいたと聞き及ぶとなおさらです.

 ある特集番組の中で,この働きぶりについて「それは自衛隊としての使命感から来るものなんでしょうか?」と質問されたある隊員が,「使命感などというものではなく,ただ人を助けたい一心で行っているのです」といっていたのには,心から頭が下がるおもいでした.

 そして私が何にもまして感銘を受けたのは,「それに何よりも,自分たちが国民を守る最後の砦(とりで)だからです」と言っていたことです.

 自衛隊の位置づけについては,憲法の問題とも絡んで,以前からいつも議論の遡上に上がってきましたが,私はこの場で,自衛隊が違憲であるか否かとか,PKO派遣時に武器使用をどうするかとか,微妙な問題を議論するつもりはありません.

 しかし,明治維新,そして太平洋戦争に匹敵するともいわれるこの未曾有の国難に際して,国民を力強くリードしていくべき政治家たちといえば,相も変わらず国民不在の醜い争いばかりを繰り返し,危機管理がゼロといってもいいほどの醜態をさらけ出している体たらく…,
 こんな彼等の情けない姿をみるにつけ,現地にいち早く赴いて自分たちの身の危険も顧みず被災者たちに寄り添った自衛隊員の献身的な活躍が,どれほど頼もしくありがたかったかということを,今回こそは国民誰もが素直に痛感したのではないでしょうか?
 国民の中には,自衛隊廃止論さえ主張してはばからない人々もいるようですが,今後も本当に同じ主張を繰り返す勇気があるでしょうか?私は彼らに問い正してみたく思います.

 「最後の砦」として頑張ったのは自衛隊だけではありません. 
 今回の大震災では,数多くの医療機関も被災し,医療難民となった多くの被災者たちが命の危険にさらされました.そんな中,医師や看護師をはじめとした医療従事者たちは,十分な機器や薬品もない中,被災者たちの健康を守るべく,全国から集まった同志たちにも助けられて,疲労困憊した身体にムチ打って日夜奮闘したのです.

 私自身は残念ながら現地に赴く機会はありませんでしたが,同じ医療従事者として,彼らの献身的な活動を心から誇りに思い,大きな拍手を送りたいと思いました.

 医療従事者,特に医師については,これだけの情報化社会になっても,世間の一部では相変わらず誤ったイメージを持たれていることは悲しい限りです.しかし,大半の真面目な医師は患者さんを救うために私生活さえ犠牲にして身を粉にして働いているのだ,ということを声を大にして言いたい…,それは,自衛隊と同様,人間のかけがえのない生命を守るという意味において,私たち医療従事者もある意味「最後の砦」だと思うからです.

 私は,そんな仕事を天職として与えられた自分を誇りに思いながら,今後も励んでいきたいと思います.
. プロフィール

Dr.Ohkado

Author:Dr.Ohkado
神戸市中央区新神戸駅ちかく,神戸芸術センタービル内医療モールにある循環器科を主とする開業医です。
徒然なるままに,日々考えていることをエッセイとして書き綴っていきます.
ご意見下さい.

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