Dr.OHKADO's Blog

. 癒しの時代へ

 先日の休みの日には久しぶりに行きつけの理容室にいきました.以前のブログにも書いたとおり,大変お人柄の良いご夫婦が何人かのスタッフを遣って美容室と理容室を同じフロアでやっておられますが,ここ1ヶ月ほど休業にして大改装をするのでぜひ楽しみにしておいてほしいとのことでした.

 今までもとても垢ぬけたお洒落な雰囲気でしたが,今回は理容室と美容室を一体にして内装にもchicな雰囲気を加え,椅子もタカラベルモント製の飛行機のファーストクラス並みのものに代えられていました.さらに驚いたのは,「ヘッドスパ」を始めたとのこと,初回割引もあり私も試させてもらいました.専用スペースの内部は間接照明の薄暗い部屋で,relaxation musicが心地よく身体を包み,座り心地のよいイスに座ったあとは,女性スタッフによる頭のスキンマッサージ,トリートメントなど,なされるがままで,あまりの気持ちよさにいつの間にかうとうとしてしまいました.ここしばらく種々の雑事で本当に多忙だっただけに,短時間ではありましたが心からくつろげました.何か病みつきになってしまいそうです.

 昨今,やたらと「癒し」とか「リラクゼーション」とかという言葉が流行っています.
マッサージ,アロマセラピー,ハーブ,岩盤浴,エステ…と,健康産業の隆盛と相まって次から次へといろいろな種類のものが現れ,「癒し産業」とまで言われています.
 いつの時代でも疲労困憊したり心身衰弱したりすることはあったはず,それでも高度成長期であった十数年前まではそんな言葉はあまり聞いたことがありませんでした.おそらく誰もが前へ前へと突き進み,疲れを感じるような余裕も必要もなかったからかもしれません.

 それに戦後60年も経ち,ローマ帝国が平和を満喫していた時代「パックスロマーナ」に文字って「パックスジャポニカ」とでもいいましょうか,多くの社会問題をかかえているものの今の日本はとりあえず平和です.戦中戦後の激動の時代を生き抜かれた方々にすれば,「なにが癒しや,わしらの時代は今日食うおマンマもなく,明日をも知れぬ命やったんやで!」と叱られそうです.

 しかし時代は移り,日本もいろいろな意味で過渡期あるいは停滞期とでもいう時代に入ってから,がむしゃらに進むのを止めた人々がふと自分たちの姿を振り返ると,堰を切ったように出てきた様々な社会の歪みによって,心身ともに押しつぶされそうになっている自分たちの姿をそこに見ることになったのかもしれません.
 たとえ見かけは平和で経済的にもそこそこ豊かではあっても,人々は自分たちの日々の生活や国の行く末に漠然とした不安を抱き,何か心のよりどころを失っていまい,心身ともに疲れてしまっている…うつ病患者や自殺者の激増はまさにその証拠でしょう.

 結局,癒し産業は,まさに現代日本に必要不可欠なものとして現れるべくして現れたのに違いありません.言い換えれば,こんな商売にお金をつぎ込まなくてもいつも心身ともに安らかであることができれば,それが一番理想的だと思います.

 でも,若い女の子ならともかく,なんかエエ年こいたおっさんが「癒されたいです…」なんて言うのを聞くと,ちょっと引いてしまいますけどネ(笑).

  
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. 理想の境地

 10月も半ば,すっかり秋本番となりました.はやいものでクリニックももうすぐ開業後1年半ですが,新型インフルエンザをめぐるゴタゴタや,スタッフの一部の入退職のため,なんだかんだと大変です.

 先日オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞しました.就任後まだ9か月で具体的な成果をまだ出していない時点での受賞に,本人はもちろん周囲も驚いているようです.平和賞の基準にはあいまいな要素もあると訊きますが,前政権の一国独裁主義から勇気ある脱却をし,核兵器の廃絶や環境問題への積極的な取り組みに対して,今後への期待も込めて与えたとのことです.しかしこの受賞に対しては賞賛の声と同時に,特に共和党サイドから,受賞を辞退するべきだとか,まだ成果も出していないのに受賞の権利はないといった批判の声も多いようです.

 私には彼が本当に受賞に値するかどうかは判断できません.しかし結局周囲の批判の声というのは,自分にはなし得ないことに対するねたみやそねみ(jealousy)以外の何物でもないと思います.彼が受賞したことに対して誰も迷惑を被ったわけではありません.素直に喜んであげればいいのに,と思うのは浅はかでしょうか?

 古今東西,人間社会においてねたみやそねみは不可避なものである,大げさに言えば,人類の歴史の変遷は,残念ながら多くの場合こういった単純な感情がきっかけになってきたといっても過言ではありません.

 さてクリニックには,80歳を超えた高齢者の方も多く訪れます.私は彼等と話をしていると,見事なまでに無駄なものがそぎ落とされ,すべてを達観した,泰然自若とした姿に,むしろこちらが癒されることがあります.
 ある高齢の男性は,縁あって私が心臓の手術をさせていただき,今も月1回きちんと通院されています.診察室に入ると私ににこやかに挨拶されて,サッと上半身裸になり,お願いしますとまたお辞儀をして椅子に座られます.口癖のように「先生のお陰で元気になりました.今はこうして元気に暮らせているだけで感謝しています」とおっしゃり,聴診ひとつ,検査ひとつ,説明ひとつにも笑顔で感謝の言葉を出され,帰り際には「ありがとうございました」と,深々と頭を下げて出て行かれます.たったそれだけのことなのですが,医師とはいえ,自分の息子より若い私のような若輩者に対するこの姿勢に,私の方が頭が下がってしまいます.

 人間,ねたみやそねみのような感情がなくなるためには,老境に達するしかないのでしょうか?しかし年をとっても争い事や人間性を疑うようなことが好きな人々も多いのを見ていると,それだけでもなさそうです.
 私も今まで様々なねたみやそねみを受けましたし,他人に対してそれを抱いたことも多々あります.また,クリニックを開業して人を使う立場になると,なおさらです.こういった感情からいっさい解き放たれ,泰然自若として自分のなすべきことだけを粛々とこなし,どんなことにでも感謝できような心境になれば,どれだけ気持ちが楽でしょうか?
 そういった境地に達するにはまだまだ修行が足りませんが,少しでも近づきたいと思うこの頃です. 
 

. 暗澹たる気分

 昨日は,IOC総会で2016年オリンピック開催地の最終選考が行われ,結局南米発の開催地としてリオデジャネイロに決定,2度目の開催を目指して立候補していた東京は落選しました.
 落選の理由は多々あるようですが,その一つが,国民全体の支持がいまひとつだったということのようです.確かにオリンピックは多大なる経済効果をもたらし,国民の意識も高揚するかもしれません.しかしいまひとつ国民の間に気分が盛り上がらないのは,東京ばかりが発展することに対する地方の人のやっかみもあるにせよ,経済も低迷しあらゆる難題の山積している今の日本は,7年も先のオリンピックのことで浮かれている場合ではないという気持ちが正直なところかもしれません.戦後の奇跡的な復興を遂げた日本が国威を発揚する絶好の機会として国民全体が盛り上がっていた前回のオリンピックの時とは状況が全く異なると思います.

 ところで私はこの4月から医師会より介護認定審査員を仰せつかり,月に1-2回,認定審査会に出席して介護保険を申請された方々の介護度の決定を行う仕事をしています.毎回,主治医と調査員が作成した患者さんの報告書を読むのですが,これを見ていると本当に暗澹たる気持ちになります.

 85歳の一人暮らしの老人,胃ガンで胃を全摘したばかりなのに脳梗塞で左上下肢麻痺,おまけに認知症が進行して排泄も自分でできない…とか,88歳の女性,骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折と大腿骨頚部骨折で寝たきり,介護者の90歳の夫も腰や膝が悪くしかも認知症が進んでいて,一人息子の家族は遠方でなかなか来訪できない…とか,何かもう,やりきれない気持ちになってしまいます.

 急速な高齢化と核家族化が進んでいるこの日本,独居老人や老々介護は増える一方,頼りになるのはまさに社会の助けだと感じざるを得ません.介護保険制度はこういった窮状を救うために創設された素晴らしい制度だとは思いますが,現場の第一線で働くヘルパーさんたちの労働環境や待遇は劣悪だと言われています.確かに医師や看護師などに比べると専門性は低いものの,実際に彼等の力なしでは介護の現場は成り立ちません.私は彼等の待遇をもっともっと向上させ,一生でも続けられるようにしてあげるべきだと思っています.

 先日ついに政権交代があり,矢継ぎ早に新しい政策を打ち出す民主党に国民全体がこの国の行方を託しています.どんなに若い人,元気な人も最後には必ず医療や介護の世話になる時が来ます.そう考えれば,誰もが老後を安心して迎えられるための施策は,それを支える人々の待遇改善も含めて何を差し置いても早急に実現していただきたいと思います.
. プロフィール

Dr.Ohkado

Author:Dr.Ohkado
神戸市中央区新神戸駅ちかく,神戸芸術センタービル内医療モールにある循環器科を主とする開業医です。
徒然なるままに,日々考えていることをエッセイとして書き綴っていきます.
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