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なにかあったらどうするんだ症候群

2023.02.28(13:00)

 新型コロナの第7波もようやく終焉を迎えつつあり,発熱外来で訪れる患者さんの陽性率もかなり低くなりました.インフルエンザもたまに陽性が出ますが,昨年よりは多いとは言えコロナ禍前のような流行には程遠い印象です.

 さて,ようやく重い腰を上げた政府は,ゴールデンウィーク明けからこの新型コロナウィルスの感染症分類を2類から5類に格下げすることに決定,またマスクの着用も今月3月半ばからほぼ大幅に緩和する方針を打ち出しました.

 賛否両論はあるでしょうが,私個人としては,ようやくこの時が来たか,と喜ばしく思います.

 マスクに関して厚労省の示したその要旨は,ざっと以下の通りです.

 マスクの着用は原則不要,着用は個人の判断に委ねられるが,以下の様な場面はマスクが推奨される.
・医療機関や高齢者施設などへ訪問する時,混雑した電車やバスに乗車する時.
・有症状の人,検査で陽性となった人,同居家族に陽性の人がいる時に,通院などやむを得ない外出時.
・重症リスクの高い人が流行時に混雑した場所に行く時.
・医療機関や高齢者施設などの従事者の勤務中.事業者が感染対策上等により,利用者又は従業員にマスクの着用を求めることは許容.

 しかし予想はしていたものの,案の定,国民の間ではマスク着用の是非をめぐって困惑の声が拡がっているとのことです.
 
 たとえば学校などでは,卒業式や入学式にマスクをどうすればいいのか,とか入試が近いので親としては心配だから子どもはまだマスクをするべきだ,とか,もしも感染したら誰が責任を取るのか,とか喧々諤々の意見が出て教師も父兄も困惑しているというのです.
 学校側も一部のモンスターペアレントからの批判を恐れて及び腰のようですし,例によって不安を煽ることにしか興味のないマスコミは,毎度ながらマイナスのイメージばかりの報道を垂れ流しています.

 政府がはっきりとした方針を示してくれないからだ,という人がいますが,上記方針にそれほど目くじら立てるほどの問題は見受けられなさそうです.

 要は,感染予防が必要と感じればお互いが義務ではないが自主的に着用する,医療機関,交通機関,店などではそこのルールに従う,そして何より,マスクをしない人,させない人に対して誹謗中傷はしない.それだけのことだ思います.

 ただ,ルールとして決められているならば従うのが筋だと思います.
 あのホリエモンが,マスク着用を求めた飲食店や飛行機のCAを SNSで辛辣に批判していますが,この行動は身勝手と言わざるを得ません.店や航空会社が決めたルールであるわけですから,それに従うのが常識であって,たとえば自分は靴は脱ぐ習慣がないからと言って訪問先で居住者に逆らって土足で上がることは許されないのと同じことですし,嫌ならばその店や航空会社を利用しなければいいだけなのです.

 日本人の行動規範の大きな根幹をなすものに,何よりも他人に迷惑をかけない,和を尊び周囲に従属的に行動する,ということがあります.
 コロナ禍においては,奇しくもこの規範の負の面が露呈したということでしょう.マスクひとつにしても,感染防止のためにマスクをするというよりは,鼻から下のメークに時間をかけなくて済むからなどという女性の声もありますし,ちょうど花粉症の季節でもあるという理由もあるでしょうが,多くの場合はやはり,周囲の批判の目に晒されるのを恐れて我慢してでも外せなくなってしまっているということのようです.

 そしてもうひとつ,アスリートの為末大さんが面白いことを言っていましたが,日本人は今,「何かあったらどうするんだ症候群」に罹患しているとのこと.最近の日本人は何か新しいことを行おうとしても結末を心配ばかりして思い切った決断が出来ない,予想外の結末になると厳しく批判される,なので失敗が許されない空気があってイノベーションも起こりにくい,という極めて厄介な「病気」です.
 コロナ禍になってからますますこの症候群が悪化し,マスクひとつ外すのさえ,その後のことばかり心配して容易にできないのだと思います.

 決断力のない某首相が「検討使」として揶揄されていますが,まさに彼も「何かあったらどうするんだ症候群」の疑い濃厚ですし,かと言って私たち国民とてマスクの件を考えただけでも偉そうなことは言えません.

 今,ウクライナでは,ロシアによる卑劣な侵攻により連日のように多くの犠牲者が出ていて,なんの罪もない多くの人々がいつ終わるともしれぬ戦禍に怯える過酷な日々が続いていますし,混沌とした世界情勢は,一歩間違えれば第三次世界大戦に突入するかもしれないとさえ言われるほど極めて不安定になっています.

 なのにこんな時に,マスクの着脱云々だけで呆れるほど不毛な議論をしている国など,世界中のどこにあるでしょう.まさに平和にどっぷりつかってしまった日本人らしいといえば,らしいのでしょうが…


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節目の年へ

2023.01.30(16:31)

 早いもので今年もはや1ヶ月近くが経過しました.

 ここ数日は,数十年に一度の最強寒波の到来とのことで,日本中が大変な寒さになっています.
 例によって北海道や東北,北陸ではとんでもない降雪量になり,あちこちで雪の事故や交通網の麻痺が多発しています.関西地方も例外ではなく,高速道路等の渋滞はもちろんですが,京都方面ではJRの列車が何本も同時に立ち往生してしまい,大勢の人たちが飲まず食わずで車内に何時間も閉じ込められてしまうような事態も起こりました.

 私の住んでいるエリアでは,先日は積雪で通勤で使っているバスが止まってしまい,やむなく電車通勤となりました.気候の温暖な神戸は雪といっても数センチ積もっただけなのですが,凍結した道での転倒を避けるべく私もかみさんもトレッキングシューズで外出,これは大正解でした.案の定あちこちで多くの人々が転倒しているのを見かけましたが,何よりも普段雪に慣れて地域ならではの風景でした.

雪

↑クリニックの入っているビルのすぐ北側

 それでもこれくらいの雪は仙台に住んでいた時のことを思い出すとはるかにましです.公共交通機関も神戸や大阪ほど便利ではなく,自動車がなければ生活が成り立ちませんでしたから,冬季になれば大雪が降る前にスタッドレスタイヤを履き,出勤前には車庫の前で雪かきするのが日常でした.



 この寒波は日本だけでなく,中国東北部ではマイナス53度という信じ難いほどの過去最低気温を記録,アフガニスタンでもやはり記録的寒波が襲来,両者とも多数の死者が出ているとのことです.

 地震や津波もそうですが,こういった自然災害が起こるたびに痛感させられるのは,やはり自然の猛威というのは人智を超えたところにある,いくら人類が高度な文明を築き上げたと自画自賛しても,大自然の前ではなすすべもない,抗いようもないということなのです.

 今,自然を意のままにできると勘違いしてすっかり驕り高ぶってしまった我々人類は,全宇宙から見れば吹き飛びそうなほど小さなこの地球という星の上で,相も変わらず愚かな争いに明け暮れています.
 大災害が起こるたび,これはそんな愚かな我々人類に対する鉄槌であり,猛省を促しているのだと思います.

 さて,50歳という人生の節目の直前に開業,それからあれよあれよという間に15年が経過した今年,なんと私もついに65歳になってしまいます.我ながら信じられない気持ちですが,社会学的な年令区分上はついに高齢者の仲間入りというわけです.

 自慢ではありませんが,患者さんはじめ多くの人々は,私の年齢を聞いたり,もう孫がいると聞くと,ほとんどの方が信じられない,せいぜいまだ50台前半くらいだと思っていた,などと言って驚かれます.体型が若い時とあまり変わらないことや白髪やシミが少ないこと,毎日バタバタと動き回っているので齢を重ねることによる貫禄が全く感じられないことなどが理由なのでしょうが,人々の健康を預かるという仕事であること,また特にアンチエイジング目的で来院される方も多いことを考えると,老けて見られるよりは,まあえぇやないか,と妙に納得しています(笑)

 そうは言ってもやはり加齢には抗えず,少しずつ色々な面で衰えがきているのは因めません.それも柔軟に受け入れつつ,今年1年も,私も含めて家族の誰もが心身ともに元気で,仕事にプライベートに充実した日々が送れれば,それに過ぎたる幸せはありません.


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年の瀬雑感

2022.12.29(21:56)

  今年もいよいよあと残りわずかとなりました.
 開業14年,おかげさまで患者数もまだ増加し続けており,その上ワクチン接種,コロナ診療と,未だコロナに翻弄され,仕事面では超多忙な,けれども充実した1年でした.
その中でも,忙中閑あり,今まで訪れたことがなかった国内随所に6回ほど旅行し,活力と感動をもらい,また多少なりとも地本の活性化に貢献できました.

 年末の忘年会シーズン,今年は区医師会の忘年会も3年ぶりに行いましたし(風評など気にせず迷いなく断行してくださったY会長には感謝と感服です),クリニックの忘年会も,昨年同様全員抗原検査を行なった上で断行しました.いつも残業して頑張ってくれている素晴らしいスタッフにひとときでも楽しんでもらえてよかったと思います.

 そして先日は,3年ぶりに母校六甲学院の同期会が行われました.
毎年幹事のTくんたちが中心になって計画してくれているこの会,コロナ禍になってからはzoomでのオンライン開催のみでしたが,今回は以前のように新大阪のホテルでハイブリッドで開催,対面参加者も30名近くを数えました.

 コロナ禍により,通常の会議ならオンラインでも可能だということは十分立証されましたし,医師会や学会などで私もその恩恵に預かっていますが,やはり同窓会のような集まりでは,対面に勝るものはないとつくづく感じました.
 もう来年はいよいよ高齢者の仲間入り,残念ながらすでに鬼籍に入った仲間もいましたが,概ね皆元気に活躍しており,久しぶりの対面での再会で心から楽しいひと時を過ごせました.その後神戸に戻ってからは親しい友人たち数人で2次会に突入,調子に乗って飲みすぎてしまい,翌日は二日酔いで合気道の稽古はサボってしまいました(笑)

 なおこの会ではT君からの指示で挨拶がてらコロナやワクチンについて短いレクチャーを行う機会を与えられ,酔いも手伝って勝手な持論ばかり述べましたが,それなりに面白く話せたかなと自画自賛しています.

 クリニックは昨日の午前で本年の診療を終了,とりあえずほっとしました.
 今日は神奈川から次女が孫を連れて帰ってきました.10月に2歳になった彼は,明るく天真爛漫に育っており,とにかくよくおしゃべりするようになりました.「これ何?」「ねぇねぇ見て!」と盛んに話しかけて来る姿の愛くるしさに私たち夫婦もすっかり目尻が下がってしまいます.子供の成長に心から驚くと共に,我が娘ながらうまく子育てしていると感じます.

 さて,今年はロシアによる突然のウクライナ侵攻をきっかけとして世界情勢が一気に不安定になり,その影響は私たちの生活にも大きく及んだ1年でした.
 来年はいったいどうなるのか,正直不安でいっぱいですが,少しでも状況が改善し,1日も早く平穏な日々が戻るように祈るばかりです.

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早くウィズコロナへ!

2022.12.04(23:56)

 今年もあと1ヶ月になりましたが,クリニックは例によってこの時期多忙を極めています.

 10月,11月には,週末を利用して伊豆,岩国に旅行してきました.
 伊豆では熱海駅からレンタカーを利用して下田,修善寺と周遊しましたが,今年のNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でホットな地域でもあり,大変勉強になりました.修善寺で宿泊したホテル「宙(SORA)渡月荘金龍」は,少し値段が張りましたが極上の料理とホスピタリティで,心からくつろげました.
 岩国といえば言わずもがな錦帯橋ですが,訪れたことがなかったため今年最後の小旅行に選びました.
 岩国城をはじめ岩国の名所旧跡はこの美しい橋を渡ったところにコンパクトにまとまっており,天気にも恵まれ城主吉川家ゆかりの国宝や建造物などをゆっくりと見てまわれました.

 先日は西宮の兵庫県立芸術文化センターで,渡辺貞夫のコンサートを観ました.日本が生んだサックスの世界的大御所,「ナベサダ」の生演奏を初めて聴きましたが,2時間半のコンサートでは,ビッグハンドと共にバラードからボサノバまでオリジナルナンバーを次から次へと演奏,来年齢90を迎えるとはとても思えないくらいエネルギッシュでした.

 私も五十の手習で始めたアルトサックス,週に1,2回の練習ではなかなか思うようには上達しませんが,上手い下手は別として,歳を重ねても楽しく吹けるようになりたいものです.

 コロナ禍ももう丸3年を迎えようとしていますが,すでにどの観光地も沢山の観光客で賑わっており,入国制限が解除されたせいもあって外国人観光客の姿もチラホラ見かけました.
 先日のコンサートも,マスク着用こそ推奨されているものの3000人以上収容できる大ホールは入場制限もなく満席で,移動時には1メートル以上の間隔を空けてくださいなどとアナウンスされていましたが,そんなもの誰も守っておらず,ただのパフォーマンスのようでした.

 今日本が決勝リーグに向けて熱い戦いをしているカタールでのサッカーワールドカップでも,観客の誰もマスクなどしておらず,コロナのことなど話題にも上がらないとのことです.

 クリニックの発熱外来も毎日のように検査希望者が来ますが,陽性と判明してももう誰も驚きもしないというのが実情です.公式に報告されているだけで国民の5人に1人が罹患しているのですから(この数字も全く意味はなく実際は3人に1人くらいではないでしょうか)当然でしょう.

 学校給食もようやく黙食とやらを要請しなくなったとのことですが,大人が宴会をやっているのに何を今さら,という感じです.
 
 隣国では政府があまりにも強権的なゼロコロナ政策に固執して国内のあちこちで予想外のデモが頻発し,天安門事件の再来になるのではと危惧されており,今後の成り行きを世界中が注視しています.

 先日WHOのテドロス事務局長が,すでに世界は感染とワクチンによりすでに90%の集団免疫を得た可能性があると発表しました.
 すでに世界はウイズコロナ,アフターコロナということで,日本人の大半の正直な気持ちも同じでしょう.

 私は基本的な感染対策やワクチン接種が不要などというつもりは毛頭ありませんし,実際,感染後の後遺症がひどい例も多々あり,そういった人たちにはきちんとした医療を施す必要があると思いますし,クリニックの後遺症外来でもそうしています.

 けれども,マスコミや世論や支持率ばかりを気にしていつまでも同じ方法に固執し,決断力や実行力に乏しい今の政府のやり方は,あまりにも不甲斐ないと言わざるを得ません.

 以前のブログで,私は屋外では交通機関などを除いてマスク着用をやめたことを書きましたが,政府の呼びかけ(といってもこれも今ひとつ基準が曖昧なのですが)にも関わらず街中ではまだまだマスク着用者の方が大半のようです.

 何事にも忍耐強い,和を尊ぶ我々日本人は,隣国のように激しいデモや暴動を起こすことなど決してせず,少しずつ少しずつ,周りに気遣いながら,草の根運動のようにしてポストコロナへの雰囲気が醸成されていくのを待つしかないのでしょうか(笑)


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新たなる海原へ

2022.10.29(21:21)


 今年もはや2ヶ月少し,毎年ながら400メートル走の最後の直線100メートルのラストスパートとでもいうような慌ただしい季節となりました.

 さて,今や医療機関には,他の分野と同様,急速なデジタル化の波が押し寄せています.電子カルテはもちろん,診療報酬のオンライン請求も当然のようになり,コロナ禍が始まってからはオンライン診療も普及しつつあります.

 そして今なによりもホットな話題は,オンライン資格確認です.
 マイナンバーカードに保険証を紐づけることにより,患者さんの資格確認が正確かつ容易になること,さらに今後薬剤情報や健診,既往歴等の情報が紐付けされれば薬剤の重複ミスの防止,問診の簡素化などが期待され,また全国どこの医療機関に受診しても最低限の情報が共有されるので,医療者側,患者さん側双方にとってwin-winであるというのが謳い文句です.

 ただそのためには業者に依頼してカードリーダーや専用のパソコンを使った通信システムを構築せねばならず,経費も30万円を軽く超えます.
 その上マイナンバーカードや,ましてや保険証との紐づけの普及が予想外に遅れているのにどこまでニーズがあるのかという猜疑心も手伝って,多くの医療機関が導入を躊躇していましたし,正直,当院も例外ではありませんでした.

 なんとしてでもデジタル後進国の汚名を挽回したい国は,導入にはほぼ満額で補助金を出すという方針ですが,それでも遅々として進まないため,ついに補助金申請の期限を来年の3月までと決定,オンライン資格確認の導入は半ば強制となったわけです.

 私はインターネットなどなかった時代からパソコンに親しんでおり,クリニックのIT化を進めることには抵抗はなく,電子カルテや紙媒体のスキャンニング,クラウド利用等による可能な限りのペーパーレス化はもちろん,Wi-Fiやキャッシュレス決済導入も行い,オンライン診療も少しずつではありますが行っています.便利さももちろんですが,突き詰めれば患者さん,スタッフ双方の利益になります.

 そして残る天王山が,このオンライン資格確認です.しばらく様子を見ていましたが,政府の決定も手伝ってとうとうこの年末に出入りの業者に設置してもらうことにしました.

 さて,この制度については,そもそもマイナンバーカードの普及率でさえまた50パーセントそこそこな上,そこに種々の個人情報を紐付けするということで,多くの国民から不安視する意見が出ていますし,政府のやり方は慎重さに欠きあまりにも拙速であるという声も多いようです.

 もちろん日本は民主主義国家ですから,新しい施策をやろうとすると必ず反対勢力,抵抗勢力がいるのはやむを得ませんし,議論を尽くす必要はあるでしょう.

 しかし私個人の意見としては,奇しくもコロナ禍で露呈してしまった,我が国のデジタル化の恥ずかしいほどの遅れを取り戻すためにも,IT化をどんどん進めるという方針自体は間違っていないと思います.
 日本が今後も国際社会の一員として生き残っていくためには,江戸時代のように鎖国でもするのならばとにかく,第4次産業革命といわれる大波に乗るしかないわけですし,正直今の日本はその波に乗れるか乗れないかの瀬戸際に立っているということです.

 コロナ禍の初期,国民全員への10万円の特別定額給付の時も,あまりにもアナログなやり方で大混乱をきたし,とても先進国とは思えない醜態を世界中に露呈してしまったのは記憶に新しいところです.こういった作業も,国民全員にマイナンバーカードが普及すれば,簡素化と迅速性により,結局は国民の利益に繋がるのではないでしょうか?

 最近は日常生活でも行政の手続きでも,あらゆる場面でスマホを持っていることやインターネットにアクセス出来ることが前提になっています.QRコードを読み込む手段がなければ生活に必要な情報さえ得られないことも多いわけです.

 自分は電子メールを使わずに郵送やファクスや電話だけしか使いません,などといつまでも頑なに主張したところで通用しなくなっていますし,ある程度のITリテラシーがなければ就職さえ出来ません.
 そして何より,うまく利用すればこれほど便利で生活の質を高めてくれるものもありません.

 当院では,産休中のメンバーも含めスタッフ10数人全員がLINEのグループメールを作り,連絡事項や確認事項は全てそれで行い,ときには簡単なディスカッションもLINE上で行っています.重要な情報が瞬時に伝わりますので業務上のミスが減り,報告事項だけのための無駄なミーティングはほぼなくなってスタッフの負担軽減にも業務の質向上にも寄与しています.
 つまり,たかがLINEとはいえ,それを使えることは当院のスタッフにとって必要不可欠なことになっています.

 もちろん高齢者を中心に,いまだにインターネットを使ったことのない人,ガラケーの人,中には携帯電話の所有さえしていない人がいますので,今のような過渡期にはこういったITマイノリティに対するある程度の配慮は必要でしょう.

 また国民のなかには,やはり個人情報の漏洩を危惧する人が圧倒的に多いのも普及を妨げている要因のひとつのようですし,なんといっても多くの国民がこういった巨大なシステムを統括する今の日本政府の姿勢に信頼を置けていないことも大きな要因ではないでしょか?

 旧統一教会の件での某大臣の幼稚な答弁のように,何かの不祥事が生じた時に,恥ずかしげもなく都合の悪いことは露骨に隠蔽しよう,誤魔化そうという姿や,お粗末な情報漏洩事件を見ていると,セキュリティーは万全だと声高く叫ばれても,信頼しろという方がどだい無理だと思います.
 政府も本当に国家あげてのデジタル化を進める気があるのであれば,国民に信頼されるように自らの襟こそ立たさなければならないでしょうし,化石みたいな頭の人間がリーダーシップを取るのだけはごめん被りたいものです.

 世界最高峰のIT先進国として有名な,バルト海沿岸の小国エストニアは,オンラインでできないことは結婚と離婚だけと言われるほどデジタル化が進んでいるようです.
 天然資源もなく,地政学的な問題でロシア帝国等次々と支配者が変わってきたこの国は,たとえ物理的に国家がなくなってユダヤ人のディアスポラのように国民がバラバラになったとしても,オンライン上に国家(e−エストニア)としてのデータを残しておけば,国民皆がつながることができ,再出発出来るということまで考えているとのこと,その覚悟たるや驚きです.
 実はこの国の国民の政府に対する信頼度は,我が国と同じ程度でそれほど高くないとのことですが,このシステムを構築するにあたっては,長い時間をかけて徹底的な透明性と公平性を確保することができるようになったからこそうまく行っているとのことです.
 もちろん人口や国家の規模,そしてなによりも準備期間が全く違いますので単純に比較することは出来ないでしょうが,エストニアには多いに見習うべき点も多々あると思います.


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