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神戸市中央区、新神戸駅近くの循環器科専門医が綴るブログです。

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節目の10年

2023 - 11/30 [Thu] - 20:42

 早いもので今年も残り1か月となりました.

 先日は神戸市中央区理事会の懇親旅行に理事の一員として参加しました.

 新神戸駅から新幹線で三島駅へ,そこからバスで箱根を越えて芦ノ湖畔に到着,老舗のプリンスホテルに宿泊.大きな露天風呂でゆったりくつろいだ後は皆で美味しい料理に舌鼓を打ち,ラウンジで行われた2次会では四方山話で盛り上がりました.
 翌日の朝は湖畔から見える富士山の美しい姿に感動,チェックアウト後バスで出発.箱根彫刻の森美術館で数々のユニークな作品群をゆっくり見学後,ジョンレノンやヘラレンケラーなども宿泊したことで有名な日本の3大クラシックホテルの一つ,風格のある富士屋ホテルでフレンチのコースを楽しみ,最後は三島スカイウォークで絶景を楽しんだ後,帰路につきました.
 楽しい旅を企画してくださった担当理事の木村先生には感謝です.

 最終土曜日にはホテルオークラにて中央区医師会の総会及び会員懇親会(忘年会)があり,参加した多くの先生方と交流を深めてきました.

 さて,開業して5年くらいしてから当時の林省治会長に声をかけられて医師会の理事となってから,ああれよあれよという間に今年度でなんと5期10年目(1期2年)となってしまいました.

 その間一貫して医療保険担当の委員として,仕事の合間を縫って活動してきました.
 月2回の神戸市中央区の理事会,月1回の神戸市医師会の医療保険委員会に出席,また新規開業の医療機関の指導の立会いに参加したり,広報誌のコラムを書いたり,保険診療について研修医のガイダンスをしたり,診療報酬改正の説明会を開いたり,また神戸市医師会や兵庫県医師会の代議員として総会に出席したりしました.

 仕事は日常業務を圧迫するほどタイトなわけではなく,私にとっては,複雑な医療制度の仕組みや最新の医療保険情報に触れることが出来るよい機会でした.
 また,ひとり開業医はつい孤独になりがちですが,何よりも活動を通じて大きく人脈が拡がり,診療のこと,経営のことなど含めて多くの先生方に相談出来,診々・病診連携においてもお互いに顔の見える関係が築けました.

 時々行われる懇親会や上記のような懇親旅行,プライベートな飲み会など,皆で集まって飲んだりどこかに出かけたりするのが好きな私にとっては,忙しい日々の中の心のオアシスでもありました.

 このまま理事を続けるように慰留もされましたが,やはり政治家と同じく同じ人間が同じ地位にずっと居座っているのは望ましくなく,今年65歳になったこと,そして10年という区切りで,来年3月いっぱいで職を辞することといたしました.
 ただ,医師会員,そして医師会傘下のいくつかの委員会の委員として,今後とも医師会には私なりに関わっていきたいとは思います.

 正直言えば,私も勤務医の頃は医師会というのがどういう活動しているのかあまりはっきり知りませんでしたし,興味もありませんでした.
 ましてや,コロナ禍の時等にあれこれ批判もされたように,医師会の活動というものが一般国民に正しく理解されているとは到底言えない状況ですし,医師,特に開業医の利権を守ることばかりに腐心している利益団体のように思われがちであることも残念ながら否定できません.最近では,医師会に入会することのメリットを感じず,入会しない医師も増えていることも確かです.

 私たち開業医側も,経営基盤が重要であることはもちろんですが,人の命を預かる仕事をしていること,そして何より特に保険診療を行うためには国民の納めた大切な保険料や税金を使わせてもらっているのだということを,今一度原点に立ち返って認識する必要があると思います.

 ただ,仕事や社会活動というものは,何よりも楽しく続けられること,やっていてハッピーに感じられるということが一番だと思います.医師会活動も同じで,国民の健康福祉の向上に資するように働くわけですが,私はそんなに杓子定規に考えなくてもいい,まず医師会や理事会に入ると楽しいことが多い,そう思えることが大事だと思いますし,批判を恐れずにいえば「仲良しクラブ」でもいい,そうして楽しく活動した結果が社会貢献になりまた自分たちの利益になるのであれば,それがベストだと思いますがいかがでしょうか?


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positive mindの勧め

2023 - 10/14 [Sat] - 00:19

 先日の週末,岡山県の玉野市にプチ旅行をしてきました.
 JR岡山駅から在来線で約1時間南下,直島や小豆島へのフェリーの発着する港が徒歩圏内にある終点の宇野駅で下車.観光地としては決してメジャーとはいえませんが,海沿いにある温泉施設の「玉の湯」を目当てに訪れる観光客は多く,今回の目的もそこでした.各種の室内・露天風呂はもちろん,広いリラクゼーションルームやマッサージルーム,レストランなどが揃った総合施設で,神戸にある「蓮」をもう少し古風にしたような感じでした.
 駅から徒歩1分の所にあるスタイリッシュなUNOホテルに宿泊,創作イタリアンのような食事に舌鼓を打ち,目と鼻の先にある「玉の湯」に通いました.1日目はゆったりと温泉に浸かり,2日目には生まれて初めての酵素風呂と至極のマッサージで心身ともに癒されました.
 初めての体験というのは何歳になってもウキウキするものです.
 なお,意外にも外国人観光客も多く,京都や大阪などメジャーなところに行き尽くした彼等が,こういつたニッチなところを目指すのだと思います.

 さて,先月,私はとうとう65歳になりました.
 制度上はついに高齢者の仲間入りというわけです.先日は,他人事だと思っていた肺炎球菌ワクチンの予防接種券が送付されてきましたし,年金手続きの案内も来ました(笑)

 最近の書店の話題書コーナーには,精神科医として有名な和田秀樹先生の「60歳からはやりたい放題」「70歳が老化の分かれ道]はじめ,老後の生き方や資産管理を指南する著作が所狭しと並んでいます.
 世界に先駆けて少子超高齢化社会となり,失われた30年の中で何もかもが低迷,誰しもが老後に対する漠然とした不安に苛まれている我が国ならではの現象だと感じます.

 私もこういった本の何冊かにざっと目を通しましたが,結局のところ最終的な結論は,以下のような点に辿り着きそうです.

 ① 何よりも心身の健康が基本
 ②周りのしがらみや人間関係に惑わされず,自分のやりたいことだけをやる.嫌なことを無理してやったり,嫌な人と無理に付き合う必要もない.
 ③いつまでも好奇心,新しいことに挑戦する気持ちを忘れない.
 ④過去の栄光や地位など捨て,初心に帰って若い人たちとも素直に交流し,むしろ彼等の柔軟な発想から学ぶ姿勢を持つ.
 ⑤容姿や服装に気を使ったり異性を意識する気持ち(変な意味ではなく)も忘れない.

 そして私がもう一つ付け加えるなら,何よりもpositive mind,文字通りいつも前向きな気持ちで生活するということです.

 私は仕事に出かける時は「きっと今日もいいことがある」,何か心配事が起こっても「大丈夫,明日は必ず良くなる」と口に出すようにして,決してネガティブなことを口にしないように心がけています.
 街中を歩いている時,背筋をまっすぐ伸ばして前を向いて歩けているか,自分の立ち姿は溌剌としているかどうか気にしています.

 人生は楽しいことばかりでなく,むしろ苦しいことや辛いことの方が多いと思います.
 でも,苦しいことや辛いことも全ていつかは終わる,そして最後には自分の人生の糧になることを身をもって知りましたし,それならば最初からそう思えれば少しは気が楽になります.

 一般的にnegative なイメージが強い加齢は,誰しも避けることはできない宿命です.ならば,少しでも楽しく,快適に過ごした方がよいに決まっています.
 若い時に比べ,徐々にできないことも増えてきます.しかし,コップの水の話と一緒で,残っている能力がまだこれだけあるやないか,と考えた方がいいし,何よりも人生経験という大きな武器が出来ています.
 私も若い頃はけっこうnegative 思考に陥ることもありましたが,決して順風満帆ではなかった人生を生きてきて,この境地に至りました.

 そしてこの精神は,長年やってきた合気道を通じても叩き込まれました.
 流派によって表現の違いはあるものの,身体中にエネルギーが漲っている状態,気持ちが前向きな状態を,私の流派では「気が出ている」といいます.
 例えば大きな相手に技をかけようとした時,「いや〜,これはあかん,無理やろうなあ」と思う,つまり「気が引っ込んだ」状態だと,いくら稽古していても,それだけで相手のパワーに飲み込まれてしまいます.
 しかし不思議なことに,ハッタリでもいいので,「大丈夫,必ず出来る」と思うだけでも技がかかるということを身をもって体験しました.
 一流のアスリートがその能力を遺憾無く発揮できるのも「気が出ている」時だと思いますし,「元気があれば何でもできる」の名言で有名だった,先日亡くなったアントニオ猪木,そして熱いアスリート松岡修造などは,まさに気が出ている人の典型ではないでしょうか?

 私の人生も残り3分の1といったところでしょうが,一日一日をこのpositive mind で大事に過ごしたい,そしていずれ訪れる今際の際には,本当に充実した人生だったと思えるように生きたいと思います.


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怒涛の1カ月

2023 - 09/05 [Tue] - 23:20

 9月に入って夜には鈴虫の音色も聞こえるようになったというのに,日中はまだ真夏のように暑い日が続いています.これも地球温暖化の影響なのでしょうか,今後が思いやられます.

 さてこの8月はおおかど家にとっての一大イベントの月でした.

 もう半世紀近く明石に住んでいる,今年93歳,88歳になる私の父母は,私や弟が独立して家を出てからは2人で元気に暮らしていました.
 2人とも3年前くらいまでは他の高齢者と比較しても非常に元気でしたが,母親は2年前の年末に転倒による骨盤骨折を起こして入院したのをきっかけに少しずつフレイルが進み,他にも種々の疾患が出現,また時を同じくして父親も徐々にフレイルが進んでしまいました.

 特にここ最近は脚力体力の急激な低下やひどい倦怠感,その上物忘れなども見られるようになり,通院や買い物などの外出はおろか,普通の日常生活にさえも支障をきたすようになり,私たち夫婦や加古川に住む弟夫婦も頻繁に訪れざるを得ない状態になっていました.
 訪問看護や訪問リハ,ヘルパーサービス等も利用していましたが,自分たちの生活もある私たちもそうそう頻繁に訪れるわけにもいかず,早晩このまま2人だけで自立した生活が出来なくなるのは誰の目にも明らかでした.

 私たちは以前から介護付き有料老人ホーム等への入居も提案していましたが,長年住み慣れた自宅を離れる決心はつき難いようで,何より明石近隣には父母の気に入るような施設もあまりありませんでした.

 しかし,夏前になりさらに状況が悪化,食事摂取もままならないほど衰弱してしまい,父母もさすがに状況を理解してとうとう入居に賛同してくれました.

 神戸市内にまで候補を広げて何軒か物色した結果,幸運にも広さ,料金その他の条件がほぼ父母の希望に沿うような2人部屋が1室だけ空いている施設が見つかりました.
 しかも我が家からも車で気軽に行ける範囲で,駅やショッピングセンターなども近く大変便利なところとあって,それこそ神の助けとしか言いようがありませんでした.
 本来ならば,本人たちにまず見学に行ってもらうのが筋でしたが,とてもそのような状態でさえなく,全て任せると言ってくれたため,ほぼ事後承諾的に決めてしまいました.

 かくしてまさに急転直下の経緯でこの終の住処へ移動したのがほんの1ヵ月ほど前.
 そこからは,入居に伴う種々煩雑な手続き,入居金の振り込み,実家の片付け,荷物や家具の搬入など,様々なことでまさに怒涛の1ヶ月でしたが,ホームのスタッフの皆さんは大変親切な上,何事も迅速的確に対応してくださいました.
 父母もほぼ満足しているようで,9月の初めの日曜日に様子を見に行きましたが,入居時に比較してかなり元気になっており,私たちもほっとしています.
 あの時,偶然このホームが空いてなかったと思うとぞっとするばかりです.

 医学の進歩により平均寿命が劇的に伸びたものの,核家族化と少子高齢化社会となったわが国において,人生の終末期を真剣に考えることは,私たち誰もが避けることのできない時代になりました.

 今やわが国では「地域包括ケアシステム」という旗印のもと,医師,看護師,ケアマネ,介護士,薬剤師,歯科医,理学療法士など多職種が包括的に関わってまさにチーム医療で高齢者を支えることに力が注がれていますし,仕事で多くの高齢者の医療介護に関わっている私も,その大きな恩恵に預っています.

 ただそうは言ってもただ一つ言えるのは,どんなに周囲の援助があっても,やはり最も負担がかかるのは直接関わる家族であるこということです.
 育ててくれた親を最期まで面倒みたいという気持ちは誰しもあるでしょうが,現実はそう簡単ではなく,介護のために結婚や出産を諦めざるを得なかったり,離職せざるを得なかったり,自分たちの身を削っている例は枚挙にいとまがありませんし,これは今社会問題になっているヤングケアラーにも当てはまります.

 私たちも今回の件で,このことを身をもって体験しました.
 住み慣れた我が家で最期を迎えるというのは理想的であり誰しもが望むところかもしれませんが,そのために若い介護者の人生まで狂わせるようなことがあっては決してならないと思いますし,何よりもそれは社会の大きな損失だと思います.
 人生の最期,子供達など介護者の負担が大きいようであれば,誰もが気軽に,また何よりも庶民に手の届く範囲の金額で,住み慣れた地域で容易に質の良い施設に入れるようにすること,そしてそれが当たり前の風潮になるように社会全体の意識を醸成することも必要ではないか?というのが私の意見です.


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これまでも、そしてこれからも

2023 - 08/10 [Thu] - 14:53

 今夏は異常気象の影響もあってか世界中で記録的な猛暑が続いており,日本も各地で過去の最高気温を更新,熱中症の犠牲者も激増しています.

 神戸も連日うだような暑さで,日中外を歩いているとサウナに入っているような感覚にとらわれます.クリニックも自宅もエアコンをフル稼働させており,光熱費の請求書が恐怖でしかありません.
 新型コロナの陽性例は当院でも毎日のように出ており,発生数だけから見ればすでに第9波到来などと言われていますが,幸いオミクロン株はそれほど重症化率が高くなく,重症化予防の抗ウイルス薬も以前よりは簡単に使えるようになったこともあり,今やこの異常な暑さの方がよほど国民の関心事になってしまっています.

 さて,7月は盛りだくさんでした.

 前回のblogで書いたように,第1週の週末には大学の関西同窓会がありました.

 半ばには3連休をいただき,立山黒部アルペンルートに旅行してきました.弥陀ヶ原や室堂の美しい自然の中のトレッキングもさることながら,私にとっては初めて黒四ダムを訪れることが大きな目的でした.

 50年以上も前に,日本の土木技術の粋を尽くして7年もの歳月と多くの犠牲者を出して作られたこのダムはまさに高度成長期のシンボルだったでしょう.
 映画「黒部の太陽」でも描かれた通り,当時このダムの建設は考えられないほど困難を極めたことで知られています.作業員たちの労働環境も相当過酷だったようで,今風に言えばブラックの最たるものだったかもしれませんが,彼等にはこの国の明るい未来を作る一翼を担っているという自負心があったのだと思います.

 その翌週には,クリニックの納涼会を行いました.
 今年は開院15周年,少し贅沢をして,私が以前から時々個人的にお世話になっている北野のワインレストラン「Vin Vino」を借り切りました.
 ソムリエの奥さんとシェフのご主人さんがやっている雰囲気の良い素敵なお店で,スタッフ皆,時の経つのも忘れて美味しい料理とワインで心ゆくまで楽しんでくれたと思います.
 今後も職員にとっては働いていて楽しく,利用者にとっては受診してよかたといつも思ってもらえるような医療機関であり続けたいと思います.

 最後の日曜日には,以前からの知り合いである,女性チェリスト,島田瑠萌さんのリサイタルに出かけました.
 まだ20台後半の彼女は,関西を中心に室内楽,オーケストラやソロで演奏活動をしている新進気鋭のチェリストです.
 クリニックにも近い近隣の教会を借りて行われたコンサート,素晴らしいピアノ伴奏とのコラボも冴え渡り,心洗われる時間を過ごさせてくれました.競争の厳しい世界とは思いますが,彼女の今後のますますの活躍を祈ります(→ 島田瑠萌オフィシャルサイト).

 私も普通の会社員であれば年齢的にはすでにもう第一線から退く年齢でもあり,高校の同級生たちには退職して悠々自適な?生活を送っている者たちも多くいますが,幸か不幸か私はいまだフル回転で仕事をしています.
 IT化により仕事の効率がどんどん上がっているとはいえ,診察室で患者さんに丁寧に向き合うという人間対人間の作業は決して手抜きできませんし,時にはさすがに疲労困憊することもあります.

 しかしだからこそ,旅行や飲み会やコンサート等が頭をリフレッシュするいい機会になっていると感じます.

 今後何年医師という仕事を続けられるかわかりませんが,こんな感じで仕事脳のスイッチをオンオフしながら,できるだけ質を落とさず,長く,そして何よりも楽しく続けられればと思います.

黒部73
弥陀ヶ原ホテルより見える富山湾に沈む夕日
黒部184
圧巻の黒四ダムの全景



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医学の進歩にあっぱれ!

2023 - 07/14 [Fri] - 15:12


 先日の土曜日,母校の岐阜大学医学部の関西出身者の同窓会が大阪梅田で行われ,13人の同窓生が集まりました.
 母校は関西から近いので私を含めて関西出身者も多く,西宮の某病院の消化器内科医であるA君が幹事役になってくれて適宜開催していましたが,ここ3年ほどはコロナ禍でそれも叶わず,今回は久しぶりの開催でした.

 光陰矢の如し,もう今年度は全員が前期高齢者の仲間入り,勤務医を定年退職して老健などで第二のキャリアを始めた者もいますし,私のように定年のない開業医も何人もいましたが,いずれもまだほぼ全員が現場の第一線で元気に働いていました.
久しぶりの対面の出会いは楽しく積もる話は尽きることなく,学生時代の懐かしい思い出話や昨今の医療の四方山話で盛り上がりました.

 私が医師になったのは1983年,今年でもう卒後40年になりますが,この間に医療はITや生命科学の進歩に助けられて,革命的とも言える進歩を遂げています.

 私が医師になりたての当時は,抗生物質は数えるほどしかありませんでしたし,感染症はもちろん高血圧や糖尿病や心筋梗塞や脳梗塞,癌,関節リウマチといったありふれた病気の薬や治療法も今では考えられないくらいレベルが低く選択肢が限られていました.

 外科手術はgreat surgeon great viewなどと言われ大きく切開するのが普通で,全身麻酔ともなれば術後1ヶ月くらいの入院が普通でしたし,循環器領域でも,カテーテル治療などまだ始まったばかりで成績も今ひとつで,また心臓のオペと言えはまさに大手術で死亡率も高く,手術のみならず術後管理も大変でした.

 CTやエコーのような画像診断も,性能や画質は今と比べると天と地の差で,もちろんMRIやPETなどはまだ黎明期でした.

 パソコンもまだまだ普及していませんでしたから,カルテはもちろん紙カルテ,レントゲンも全て大きなフィルムに現像するため,何枚もとると重くてかさばりました.それを見るために病棟や診察室には,フィルムを見るためのシャウカステンというディスプレイ装置が必須でした.
 私たち若い医師は結果の出た検査結果の伝票を分厚いカルテに貼り付けたり,カンファレンスで発表する資料を手書きで作るようなアナログな仕事が山盛りでした.

 インターネットなどもちろんありませんから,文献検索も手間がかかりました.
 病院や大学の図書館に行って,カビ臭い書庫の中を一冊一冊分厚い本を探してカートで運んではコピーするのが常で,その労力たるや大変なものでした.

 こういったことを思い出すと,本当に隔世の感があります.

 当院にも先日,新しい超音波検査装置とホルター(24時間)心電図装置がやって来ました.
言わずもがな,前者は心臓や血管はもちろん諸臓器の状態を身体に全く悪影響なく手軽に観察できる装置,後者は不整脈などをとらえるために1日中装着して心電図を記録できる装置で,いずれも循環器診療の必須アイテムです.
 開業して15年,それぞれ3台目ですが,初期のものと比較してそのコンパクトさ,スタイリッシュさ,そして何よりもその性能の進歩たるや驚異的で,たった15年という短期間でさえもテクノロジーの進歩には驚かされるばかりです.

 医学の進歩はかくも速いのに,私たちは歳をとる一方でついていくのも大変ですが,日進月歩の医学ですし,我々医療従事者そして患者さんたちにとっても着実に便利にはなっていますので,その恩恵にたっぷり浸って,何よりも楽しみながら仕事をしていきたいと思います.


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プロフィール

Dr.Ohkado

Author:Dr.Ohkado
神戸市中央区新神戸駅ちかく,神戸芸術センタービル内医療モールにある循環器科を主とする開業医です.
徒然なるままに,日々考えていることをエッセイとして書き綴っていきます.
ご意見下さい.

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